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寺西の講座は続く

「眞門の言われた通りに染まりたいって思いますか?」 「・・・はい。とっても」 「じゃあ、間違いなくモテますよ。ちなみにSubの一番人気は永遠のツンデレキャラなんです。 なので、今はほとんどのSubの方がツンデレキャラをわざと演じるんですよ。 より良いご主人様を見つける為に。 まあ、最近、ツンデレキャラの人気も落ち着いてはきましたけどね」 「はあ・・・そうなんですか・・・」 星斗は首を傾げた。 今度は一体、何の講座が始まったんだろう・・・? モテ講座・・・??? でも、俺がモテて、知未さんがモテないって。 ダイナミクスの性の世界って、やっぱり、おかしいと思うんだけど・・・? 「でも、俺、無職みたいなもんですよ、今の臨時のバイトが終わったら」 「ああ。それも心配ありません。Subの無職はプレミアが付くほどの人気です」 「え?」 「だって、そうじゃないですか? 考えてみてくださいよ。 Domにとったら、朝昼晩、日付も曜日も時間も関係なく自由に支配できるんですよ。 経済力のあるDomなら家で飼えることだって出来る」 「飼えるって・・・」 「Subは基本、受け身ですから、世間や会社の仕組みなんかに否応なく順応してしまうんですよ。 なので、イヤだイヤだと愚痴りながらも、仕事をこなしてしまう方が多いんです。 下手したら、いつの間にか、容量オーバーの仕事をすることによって、Playしてるような快感に陥ってしまうSubの方もいらっしゃって・・・当クリニックでもその症状の治療をするのには大変苦労するんですよ。 だから、Subの無職の方って、ホント少ないんですよ」 「はあ・・・」 星斗は複雑だった。 プレミアだ、とか言われても、全然褒められた気がしない。 結局、Subのくせに、社会に順応できないダメな奴だって、けなされただけのような気がする・・・。 「『俺は何よりも仕事が大事だから。私には夢があるの』 そういうSubは全くモテません。 Subは苦痛が苦手ではないので、夢を追って大変な思いをすることを苦痛だとは思わない傾向があるんです。 なので、夢を見つけてしまったら、叶う、叶わないは置いておいて、夢を追いかけてしまうSubの方が大変多いんですよ。 しかし、残念ながら、夢を追いかけて頑張るSubをDomは応援しないどころか、一切、相手にもしません。 それはDomは絶対に最後には迫ることを自分で分かっているからです。 『俺を取るのか? 夢を追うのか?』って。 だから、最初から、そんなSubは相手にはしないんです」 「そうなんですか・・・」 星斗はもう何が何だかよく分からなくなってきた。 魅力ある人って、どんな人のことを言うんだっけ? 純粋に夢を追う人って、応援したくなって、カッコよく見えたりしない? ねえ、俺だけ? そう思うダイナミクス性って、この世界に俺だけなの・・・? 俺みたいに、夢もなくて、もうじき、無職に舞い戻るSubの方が魅力あるなんて・・・全然信じられないんですけど・・・!? そんなことを考えていると、眞門に「Normalの思考で考えるな」と、注意された言葉が重く感じられた。 やっぱり、知未さんは、俺のことを思って、首輪をつけたいって言ってくれてるんだよな・・・。 そんな知未さんにあんな傷つけるような言い方・・・。 星斗は今になって、眞門に取ったこの前の夜の言動を反省した。 「・・・あの、じゃあ、俺は一体どうしたら良いと思いますか?」 寺西の度重なるダイナミクスの性の講座を聞いた星斗は訳が分からなくなり、ついには自分で考えることを放棄してしまった。 「そうですね・・・。 Domの欲求を全て受け止める代わりに、SubはDomに目一杯に甘えて良いという権利があります。 なので、首輪をつけたくないのであれば、そのままで良いと思います。 渋谷さんがどんな我がままを言っても、渋谷さんのパートナーになる気が本当にあるのなら、Domの眞門にはそれをきちんと受け入れる義務があります。 渋谷さんはまず、大変魅力のあるSubなんだと自信を持ってください。 そして、もっと我がままになって、素直な気持ちを眞門にいつもぶつけてあげてください。 Domの眞門にとっては、それがとても大きな喜びに感じるんですよ」 「・・・そうなんですか・・・あの、ありがとうごさいました・・・」 そうお礼は言ったものの、 Normal思考から抜け出せない星斗は、本当にそんなことで良いのか・・・? と、心の中で、やはり首を傾げてしまうのだった。

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