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・・・プロポーズ?②
「星斗、結婚してくれるよな?」
星斗の煮え切らない態度に不安になったのか、今度は眞門が詰め寄ってくる。
「・・・えーっと・・・」
知未さんだけのSubになる。
それはイヤじゃないんだけど、首輪をまだつけたくない俺が、知未さんと結婚だなんて・・・。
「・・・えっと、その・・・あの・・・だから・・・」
星斗が永遠と煮え切らない態度を取っているので、明生が見かねたのか、「そこまでだーっ!」と、叫んで、また横から口を挟んできた。
「これ、どう見たって、兄貴、嫌がってるだろう! あんた、無理やり、結婚の約束させただろう!」
眞門は明生に対してだけなぜか、露骨にムッとした表情を露わにすると、
「キミね、さっきから黙って聞いてるけど、年下のDomのくせにその態度は失礼なんじゃないか! 大体、Domは本来、上下関係が・・・」
と、眞門が口にし出すと、
「うわわわわわわーーーっっっ!!」と、星斗がいきなり大声を叫んで、眞門の言葉をかき消した。
「どうしたの!?」と、当り前のように驚く眞門。
星斗は眞門の耳元でヒソヒソと囁く。
「弟がDomなの、母には内緒なんです」
「え!?」
「高校を転校したくないそうで・・・弟の性別のことはこの場では絶対に黙っておいてください」
星斗はお願いするように手を合わせた。
眞門は「分かった」と、伝わるように深く頷いた。
「あのね、私は社会的身分のある立場なので、
お兄さんには私なりの誠意をもった態度でいつも接しています。そんな私が無理やり結婚を迫ると思いますか?」
眞門は自分の言いたかった言葉は胸に押し込んで、大人の男の言葉で言い直した。
しかし、明生はまだ言い足りないとばかりに、何かを口にしようとした瞬間、「いいから、もう、あんたは自分の部屋に戻ってなさい!」と、加奈子が明生をまた叱りつけた。
「あんたがいると、話が全然前に進まなくなるんだからっ。眞門さんの言ってることは私からしたら真っ当よ。眞門さんが星斗と無理やり結婚して、眞門さんに何の得があるっていうのよ。あんたはもう自分の部屋に戻りなさい!」
加奈子がピシャリと諭すと、明生は眞門を睨みつけながら、渋々、リビングから出て行った。
「ホント、すみません。私の躾が行き届いてなくて・・・今、反抗期なんで許しやってくださいね」
と、加奈子は眞門に頭を下げた。
「いえ・・・」と、眞門は恐縮するも、Domの息子を叱りつけるって、すごいNormalの母親がこの世には居るんだな、と、内心驚くと共に、この人が義理の母親になる可能性が・・・、そう思うと若干の恐怖も感じた。
加奈子は再び、母親らしい心配した顔を浮かべると、星斗に視線を合わせた。
「で、どうなの? 本気で結婚するの?」
「・・・・・」
冴えない表情を浮かべる星斗に、加奈子はさらに不安を募らせる。
「あんたね、結婚って好きだからします、で、済む話じゃないのよ。結婚って、二人だけで幸せになります。そんな問題でもないの。親兄弟に親戚づきあい、色んなしがらみがついてくる話になるのよ。しかも、社長さんと結婚するとなると、その関連のお付き合いまでしなくちゃいけなくなるのよ? そこのところは分かっているの?」
「えーっと、だからね・・・」
星斗はまた、あやふやな態度で答えを濁す。
さすがに、加奈子も星斗の態度を見かねた。
「あの、眞門さん」
「はい」
「自分の息子を悪くいうのはなんですけど、うちの愚息のどこが良くて結婚しようとお思いなんですか? 定職にはついていませんし、長男ですから、炊事や洗濯などの家事も一切教えてないので全く役に立ちませんよ」
「はい、そのことなら心配いりません。
家事の方は今、週2に来ていただいているハウスキーパーを週5で来てもらえるように手配します。
仕事に関しても、私の収入で心配いらない生活が送れると思いますので、星斗さんには毎日好きなように過ごして頂けたらと思っています」
「・・・・・」
加奈子は無といった表情になった。
「あの・・・?」
「そんなおいしい話がこのご時世にあります? そんな好待遇で結婚するほど、うちの息子に価値あります?」
母ちゃん、さらっと酷いこと言うなよ・・・。
星斗は心の中で愚痴った。
「そもそも、うちが許しても、眞門さんのご家族のかたはどうなんですか? うちの愚息と結婚することを喜んでいただけるとは思えないのですが? 先ほども言いましたが、結婚は二人が幸せになれば良い、そんなもんじゃないと私は思っています。
眞門さんのご両親にうちの息子と結婚して頂くことを喜んでいただけない内は、うちとしましても、結婚を許すわけにはいきません。
その辺りはいかがなんですか?」
「・・・はい。突然のことでしたので、まだ、両親には話をしておりません。両親は私が子供の頃に離婚しておりまして、私は父親のもとで育てられました。父親とは今現在、離れて暮らしていますし、母ももうすでに別の家庭を持っております」
「そうですか。なら、せめて、お父様からのお許しをもらってきてから、また来てください」
そう言われると、眞門は渋い顔を浮かべた。
星斗はその顔を見逃さなかった。
・・・多分、知未さん、父親とは仲が良くないんだろうな。
「うちの息子との結婚のお許しを頂けたら、私どもも、結婚を許したいと思います。どう考えたって、御立派な会社の社長と定職にもついてもいないうちの息子との結婚が許されるなんて考えられません。
しかも、いくら、ダイナミクスの性別同士の結婚だからと言って、男同士の結婚が受け入れられるとも考えられません・・・うちはまだもうひとり息子がいるから良いですが、そちらだって、跡継ぎの問題がありますでしょうし・・・そんな許しがない状態で結婚しても、星斗が傷つくことが目に見えてます」
「・・・承知しました」
加奈子の言い分が正しいと思ったのか、眞門はそう言うと、素直に引き下がって、加奈子に頭を下げた。
負けず嫌いな眞門が何も言い返さず、加奈子に頭を下げている。
その姿を見ているだけで、星斗は申し訳な思いで反省した。
自分の煮え切らない態度が全ての原因なんだとと感じ、星斗は自分を責めた。
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