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相談所へ②

「それでは、なにか、ご要望などはありますか? こう言った傾向を持つ方を紹介して欲しい、とか?」 山本は、それでも仕事はきちんとこなす。 「・・・何もありません」 「何も・・・ないんですか?」 「俺を飼ってくれるなら、どんな方でも良いんです」 「へ?」 「俺、働きたくないんです」 「・・・ん?」 「もう働きたくないんで、俺を飼ってくれる方なら、容姿も年齢も性別も問いません」 「性別って・・・そこはDomに拘りましょうよ・・・ね?」 「・・・・・」 星斗は虚ろな表情を浮かべたままだ。 首輪を外したのは、多分、失恋が原因かな・・・? 働きたくないってことは、前向きになれないってことだからな。 俺も経験あったなー、そんな時期。 山本はほんの少し同情を寄せた。 「前回のデータを確認しますと、渋谷さんはNormal育ちだそうで・・・色々とご苦労されたでしょうね。なので、こうしませんか」 山本は星斗に視線を合わせると、こう提案する。 「一対一で会うお見合い形式は当分見送りましょう」 しかし、その提案は、星斗を思ってのこと、というよりは、山本に裏の考えがあった。 一対一で会わせて、「俺の飼い主になってください」なんて言われた日には、Domは喜んでそのまま連れ去るに決まってるんだから。 そんな事されたら、俺の責任問題に問われるんだから、絶対阻止!! 「そこで、パーティーイベントに参加するところから始めてみましょう」 パーティーイベントなら、俺がずっと見張っていられるから、Domに連れ去られる確率はぐっと低くなる。 「パーティーイベント、ですか?」 「はい、パーティーイベントってご存知ですか?」 「いえ・・・」 「そうですね、毎回、Subの方とDomの方、それぞれ20人ずつくらい、合わせて40人程が一斉に同じ会場に集まってもらうんです。 それで、Domの方とSubの方が対面式で輪のように座るんです。そして、五分程会話を交わすと、Domの方が順々に次の席に移動して、また違うSubの方と五分程お話していく。それを繰り返すことによって、全員とお話しができる。そんなイベントです」 「Normalでよくある婚活パーティーみたいな感じですか?」 「はい、まさしくそうです。 ですが、最後にカップルのマッチングを発表するといったイベントはありません。そこはダイナミクス性の特殊な理由がありますので。どうしても、Domの方にCommandやGlareを使われてしまうと、Subの方が一方的に不利な状況になり、問題が起こってしまう場合がありますので。 なので、いいなと思われた方がいらっしゃった場合、一度、私たちにご連絡をいただきまして、私たちが精査して、改めて仲介をさせて頂く、そういう形式を踏むことになります。 ですので、Subの方には楽なお気持ちでご参加していただけるんですよ」 「はあ・・・随分と面倒くさいんですね。俺はサクッと紹介して欲しいんですけど・・・」 ・・・お前がなっ。 お前が面倒くさそうだから、こっちは念には念をの考えで行動してんだよ。 そんなんだから、お前、友達がいないんだよ。 山本は、見た目とは裏腹に心の中ではかなり毒を吐く性格のようだ。 「そうしてみませんか? 渋谷さんはNormal育ちなので、まずはたくさんのDomの方に触れ合ってみた方がよろしいかと思います。 ねえ、ぜひ、そうしてみましょうっ!!」 山本は目を大きく見開いて、星斗に迫った。 山本の謎の迫力に押されてしまった星斗は、「・・・はい、分かりました」と、自分の思いとは裏腹に、渋々承諾した。

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