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前途多難③

星斗と眞門は、星斗の家を出ると、近くの有料駐車場に駐車してある眞門の愛車に乗り込んだ。 眞門は運転席に乗り込むなり、ハンドルに突っ伏すと、「フーっ」と、どっと疲れたように大きく息を吐いた。 そして、一言。 「怖かった・・・」と、本音を洩らした。 加奈子の剣幕は、眞門が想像していた以上のものだったようだ。 「大丈夫ですか?」 Dom性を爆発させないよう我慢し続けていた眞門の様子を心配していた星斗は、ストレスでどこか体を悪くしていないか気になって尋ねた。 「だって30にもなって、しかも職業柄、あんなに人に怒られることなんて滅多にないからね・・・しかもDom性だから怒られることにも慣れていないし・・・怒られるって、ホント恐怖だよね」 と、ハンドルから顔を上げると、眞門は苦笑いを浮かべてみせた。 相当、無理をしてくれたんだ。 眞門の優しさが分かると、星斗は申し訳ない気持ちで一杯になった。 「・・・ごめんなさい」と、思わず謝ってしまう星斗。 「えー、なんで、星斗が謝るんだよ・・・」 眞門はまるで子供をあやすかのような優しい口調になる。 「だって、俺がお願いしたから。知未さんに俺のご主人様になってくださいって・・・」 そこまで言うと、星斗は自分の我がままが申し訳なくなり、表情を落とした。 「それは違うよ。あんなに傷つけたのに、星斗はまた俺を選んでくれた。手に入らないと諦めたものが、もう一度、手に入れられた喜びが分かる?  俺は星斗と一緒に居れてとても嬉しいんだから。それに、ご主人様に選ばれた後のことは全部Dom(ご主人様)の仕事だ」 「でも・・・」 「じゃあ、星斗は俺と一緒に居たくないのか?」 「それはムリっ」 「なら、星斗はなにひとつ謝る必要はないだろう。俺も同じ気持ちだよ。Subの為にDomが頑張るのは当然のことなんだから」 眞門は優しく微笑むと、星斗の頭を優しく撫でる。 「・・・でも、Domなのに辛いでしょ?  俺の母ちゃんに会うたびに、毎回、土下座して・・・」 星斗はまた、申し訳なく思った。 「星斗にそんな顔をさせるために、俺は頭を下げてるわけじゃないだろう。 星斗といつまでも笑顔でいるために、俺は頭を下げてるだけなんだから。 だから、そんな顔しないで」 星斗を元気付けるために、眞門は優しくニッコリと微笑む。 「でも・・・」 星斗はまだなにか不安があるような口ぶりで零す。 「どうした?」 「知未さんのお父さんとのことはどうするんですか?」 「ああ・・・」 眞門はあからさまに困った表情を浮かべた。 「俺のことなんか・・・紹介したくないですよね?」 「どうして?」 「・・・ホント、ごめんなさいっ」 「だから、なんで、さっきから星斗が謝るの。Subだからって、なんでもかんでも自分が原因だ、なんて決めつけて、自分を責めるような考えになったらダメだよ」 「はい・・・」 星斗は眞門から少しの変化を感じ取っていた。 よりを戻してから、知未さんは少し何かが変わった。 上手く言えないが、優しくなった・・・??? そんな気がする。 出会った時から紳士的で優しい人ではあったけど、あの頃の優しさとはどこか違う。 俺をとても丁重に扱うような・・・。 壊さないように優しく触れるような・・・。 うまくは言えないが、Domの圧を感じさせないよう気配りしてくれてる。 そんな感じだ。

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