150 / 311

山本さんは良きSubの友人③

「・・・というかさ、その男のシンボルにつけたリングが、お相手からの、首輪(カラー)のプレゼント、ってことなんじゃないのか?」 星斗の不安になった気持ちを打ち消すように、山本が声を掛けてきた。 「だってさ、お前が、それを首輪(カラー)だって思えば、首輪(カラー)になるんだぞ」 「・・・・・」 「別に首に付ける首輪じゃなくても、DomとSub、両者がそれを首輪(カラー)だと思えば、首輪(カラー)なんだから」 「・・・・・」 「あれ、問題解決したじゃんっ。 首輪(カラー)ももらえてた、外さなくても済んだ。 お前、頭の良い友人を持って良かったな」 と、自画自賛の山本。 しかし、そんな自己満足な喜びに酔いしれる山本を星斗は軽蔑するような目つきで見つめた。 「えっ、なに・・・?」 「じゃあ、山本さんは、チンコの首輪を差し出されて、『俺と結婚してください』って、プロボーズされたら、嬉しいですか?」 「え・・・?」 山本の良かれと思ったアドバイスは、星斗の踏んではいけない地雷を踏みつけてしまったようだ。 「そんな人と一生添い遂げようなんて思いますか!!」 「あ、いや・・・」 「どうやって、家族や友人に見せて回るんですか!! 『ほら、これが最愛の人からもらった首輪(カラー)だよ』って言って、俺はその度下着を脱いで、わざわざ見せたくもない自分のしょぼくれたチンコと一緒にチンコの首輪を見せて回るんですか!! それを山本さんは羨ましいって思うんですかっ!」 星斗は声を大にして訴えた。 「バカ、声が大きい、声が!」 今度は、周囲の目を気にせず、「チンコ」を連呼する星斗を山本が叱りつける。 「俺は、本物の首輪(カラー)が欲しいんです!! だから、なんとしても、このチンコの首輪は外すんですっ!」 「分かった、分かった、お前の気持ちはよーく分かったから・・・」 山本はこれ以上、「チンコ」と連呼させないために、必死で星斗を宥めた。 しかし、内心では違うことを思った。 チンコの首輪を外すことがどうして、本物の首輪(カラー)をもらえることに繋がるんだ? そこが自分には繋がらない。 "チンコの首輪"にDomの愛情を感じてるだけでは物足りないものなのだろうか?と、特定の相手が居ない山本は思う。 「俺は、俺のことを知ってる人でも知らない人でも、どんな人にでも、この世界にいる人全員に、俺は知未さんのものだって知られていたいんですっ。 俺は永遠に知未さんのモノなんだぞって広めたいんですっ。 同じSubなら、この俺の気持ちを分かってくれますよねっっ!!」 「うん、まあ、まあな・・・」 星斗をまた興奮させないよう、山本は曖昧に同意してみせた。 しかし、それと同時にあることを感じ取った。 星斗はもしや欲求不満なのではないだろうか。 既に束縛された関係で居るのに、首輪(カラー)をもらうことに拘り過ぎている気がする。 ひょっとして、満たされていない何かが星斗の中にあるのではないだろうか・・・? その満たされていないものが、首輪(カラー)を贈られていないことに結びついているのではないか? そう言えば、さっき何気に口にしていた。 『全然、危険な森じゃなくなったんです・・・ただ、距離を感じるというか、寂しいというか・・・もう、あの森の中では暴風が吹き荒れることはないのかなって・・・』 暴風という言葉が何を差しているのかは知らないが、星斗を不安にさせている原因は、ここにあるのではないだろうか・・・? 相談に乗ることが多い仕事柄のせいか、人の気持ちを分析してしまう癖がある山本は、勝手にそう解釈してしまった。 「だから、こんなのが首輪(カラー)だなんて絶対にイヤなんですっ。絶対に外してみせますっ!」 まるで公約を口にする政治家のように星斗は言い放った。 「そっか・・・それで良いんじゃないか・・・うん」 と、星斗の怒りのスイッチが再び入らないよう、星斗を宥めることだけに山本は最大限に努めた。 と、「・・・あっ!」と、突如、何かを思い出したように山本は声を上げる。 「・・・そうだ。 確か、アプリと連動してるって聞いたことがある・・・っ!」 と、山本は思い出したことを続けた。 「アプリですか?」 「そう。確か、アプリを使用して、そのリングの機能が色々と使えるって聞いたわ。ひょっとすると、外す方法もアプリを使うんじゃないか?」 「なるほど、アプリか・・・」 なんとしてでも外す。 そう決意を固めた星斗はある計画を実行することにした。

ともだちにシェアしよう!