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父親に会いに行く日⑨
「父さんにいくら反対されたとしても、俺は一生のパートナーは彼だと決めたんで」
眞門は物怖じせずに拓未に言い返す。
「どうした? お前、気でも触れたのか?」
拓未は眞門に対して、とても心配した表情を見せる。
「そういう言い方、彼に失礼でしょ! 本当にデリカシーのない人なんだから!」
と、眞門も負けずに憤慨する。
「父さんなら、そう言うと思ってましたよ。
じゃあ、挨拶も済ましたことですし、これで俺の好きなようにさせてもらいますから」
「そんなのダメに決まってるだろうっ。なんなんだ、これはっっっ!」
と、拓未は明らかに星斗を指差した。
・・・あ、手土産じゃなかった。
やっぱり、俺ですよね・・・?
まあ、想像はなんとなくついてましたけど。
でも、俺、まだ挨拶しかしてないですけど!?
見た目で判断するなんて、少し酷くないですかっ!
そう思っても、心の中で訴えるしかない星斗。
「首輪は? どうして、リードはしていないんだ!」
と、拓未は眞門に対し激高する。
「ピアスは・・・?
なぜしていない!?
鼻や口元・・・今時、耳にもしてないなんて!?
じゃあ、乳首にしてやってるのか!?」
と、拓未は星斗の容姿を確認すると、信じられないと言わんばかりにダメだしをしていく。
「そもそも、なんだ、この色気のなさは・・・?
本当にSubなのか?
知未、Domとして、ちゃんと調教してやってるのか?!」
拓未が星斗の容姿について指摘する度に、眞門は終始、面倒くさそうな表情を浮かべている。
・・・えーっと、つまり、お父さんがいきなりお怒りになっているのは、俺がSubらしくないってことですか・・・?
俺、そんなにSubらしくないんですか・・・?
というか、Subらしさって、何?
Normal育ちの星斗は何も分からず、ただ戸惑うしかなかった。
「お前がどんなSubを連れてくるのか、今日と言う日を楽しみにしてたのに・・・。
そもそも、親に結婚を考えるSubを紹介するなら、首輪にリード姿で連れてくるのが礼儀、常識だろうっ!!」
と、拓未は眞門を怒鳴りつけた。
そっち・・・!?
スーツ姿じゃなくて、そっちが重要だったの・・・!?
まだ知らないダイナミクス性の常識があることを今更知って、星斗は混乱する。
「キミも大体、そういう格好で来ることが失礼だと・・・」
と、拓未が星斗に説教を始めると、
「俺がその格好で良いって言ったんです」
と、眞門が拓未の言葉に被せた。
「そういうのはもう古いんですよっ。
というか、俺は星斗を調教するつもりなんかこれぽっちもありませんので」
「!?」
初めて聞かされた眞門の真意に、星斗は驚く。
えっ、俺を今、調教しないって言いました?
眞門の発言を聞いた拓未は呆れて物が言えない、そんな顔を浮かべる。
「・・・知未、冷静になりなさいっ。
自分がどれほどバカなことを言い出しているのか分かっているのか。
SubはDomに調教される事が何よりの悦びだ。
そのために、お前は存在しているんだぞ」
「いいえ、違います。
いえ、他の方は知りませんが、俺は星斗の為に存在してるんです。
Subの前に、俺の大切な人なんです。
そんな大切な人に首輪をつけるなんてこと、今後、俺は一切しませんからっ!!」
「!!」
またもや初めて聞かされた眞門の思いに、星斗も当然驚く。
ど、ど、どういうことですか・・・!?
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