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災難は勝手にやってくる②

「コーヒーで構いませんでしたか?」 星斗は慣れない手つきで、コーヒーをコーヒーカップに注ぐと、リビングのソファに座る拓未の前に差し出した。 「ああ、ありがとう」 この前の怒りは完全に収まっているのか、拓未はとてもにこやかな笑顔で礼を述べた。 やっぱり、物腰が柔らかな人だよなー。 とても、Dom性を持つ人とは思えない体面だよなー。 相性の問題なのか、星斗自身は、眞門が毛嫌いするほどの悪い印象を拓未には抱いてはいなかった。 「あの、それで、俺に話というのは?」 星斗は面と向かうソファには座らず、自然とカーペットの上に正座をして、拓未と向き合ってしまった。 自分でも気づかない内に、なぜかそんな行動を取っていた。 拓未を前にしていると、Subの性分なのか、自ら下手でいたい、そんな言動をつい取りたくなってしまうのだ。 「いや、本当にすまなかったね。 息子との言い争いがヒートアップしてしまったせいで、キミにはとてもイヤな思いだけをさせてしまって。 ふたりが帰った後にとても反省したんだよ。 息子が初めて、紹介したいと言って連れてきた大切な人だ。 だから、見た目で文句をつける前に、星斗クンのことをちゃんと確かめなきゃいけなかったなって思ってね」 「はあ・・・」 「・・・あれ? キミ、それ・・・」 拓未はピアスがついてある星斗の左耳たぶを見る。 「・・・あ、はい。お父さんに言われましたので、開けてみました」 「そう・・・。勿論、開けたのは知未かな?」 「え、あ、いや、病院で・・・」 「なんだい、それじゃあ、開けても意味ないじゃないかい」 「・・・・・」 そうなんだ・・・。 だから、知未さん、ずっと、あんなに不機嫌なんだ。 だったら、そう言って、お仕置きしてくれれば良かったのに。 「どうしてピアスを?」 「へ・・・? あ、ちゃんとしたSubになろうかと思いまして」 「それは良い心掛けだね。しかしね、そんな欲求不満な顔をしてちゃダメだよ」 「えっ?」 「Subはそんな顔は胸の内に隠さないと、色気が出ないんだよ」 「?」 「息子からは私のことは聞いているかな? "マスター"だって」 「はい」 「そうか、なら話は早い。 星斗クン、Look(私を見なさい)」 拓未が命令口調でCommandを発動せると、拓未の瞳の色が突然、黄金色に輝き出した。 「キミのその心掛けに免じて、私がキミを知未にふさわしいSubに調教してあげようじゃないか」 ※ ※ 眞門が午前の仕事、提携会社での打ち合わせを終えて、駐車場に止めていた愛車に乗り込むと、眞門のスマホが着信を知らせた。 相手を確認すると、今日、自宅の掃除を頼んでおいたハウスキーパーだった。 眞門は通話に出る。 「はい。・・・え、応答がない? そうですか・・・、分かりました。 じゃあ、今日の料金はきちんとお支払いするので、とりあえずキャンセルでお願いしますか。はい、すみません」 そう言うと、眞門は通話を切った。 ハウスキーパーの話によると、部屋のチャイムをいくら呼び出しても、いつも対応してくれるはずの星斗の応答がなく、部屋に入れなくて困っているということだった。 眞門は不審に思った。 どこかに出かけてるのか?  それとも寝てる?  星斗にしたら珍しく無責任な行動だな。 星斗は何かあれば、なんでも俺に連絡してくるのに。 ひょっとして、何かあったのか? 眞門は星斗につけてあるGPS(ペニスに装着されたリング)の位置をアプリを使って確認した。 外出してる・・・? ん・・・? どこへ行くつもりなんだ・・・?

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