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拓未からの誘い
翌日。
星斗は誰もいないリビングで、遅い朝食=ほぼ昼食といって良い食事を取っていた。
久々の激しいPlayで体力が消耗したのか、
はたまたSubの心が大いに満たされたなのか、深い眠りに落ちてしまった星斗は、朝になってもなかなか目を覚ますことが出来なかった。
そんな熟睡している星斗を、仕事に出かける前の眞門が声を掛けて起こした。
星斗が眠い目をこすって目を覚ますと、「おはよう」と、眞門はいつもの目覚めのキスを優しく星斗の額にした。
「起こしてごめんね。大事な用件だから顔を見て伝えておきたくて」
そう言うと、眞門は続ける。
「今日、うちの父から、また誘いの声がかかると思けど、断ってくれて構わないから」
そう言うと、眞門はまた、やさしい軽いキスを星斗の額にした。
「じゃあ、俺は仕事に行ってくるから。昨日は疲れただろう。今日は好きなだけ寝てるといいから」
そう言うと、眞門は寝室を出て行こうとした。
星斗は眠い頭を一生懸命振り払って、
「・・・あのっ、どういうことですか?」
と、眞門の背中に向かって問いかけた。
眞門は振り返ると優しく微笑み、
「昨日、約束したろう?
俺以外のDomの命令には従わないって」
と、言い残し、寝室を出て行った。
「はい・・・行ってらっしゃい・・・」
星斗が眞門の背にそう言うと、寝室の扉が閉まった。
「でも、そんなことして、本当に良いのかな・・・」
と、朝に言いつけられた眞門の言葉を思い出した星斗は、戸惑いながらつぶやく。
要は、お父様からの誘いは今後、一切無視しろってことだろう?
でも、そんなことして平気なのかな?
だって、結婚したい恋人 のお父様だぞ。
Domや"マスター"の前に、交際を認めたもらいたい大切な恋人のお父様なんだぞ。
それを無視しろって・・・。
星斗は意外に自分が複雑な立場にいることを今更ながらに悟った。
朝の知未さんは、またいつもの穏やかな知未さんに戻ってたけど、昨日の知未さんは久々に俺様で素敵だったな。
俺はやっぱり、あの知未さんも好きだなー。
俺しか見させないぞっていう、あの強引な支配力。
たまんないよなー。
星斗は思わず、シャツの裾をまくり上げると、自分の体を目視する。
いっぱい、知未さんに痕を残してもらってる。
首輪がなくても、俺はこれがあれば充分幸せだ。
星斗は噛まれて出来た痕や吸い付かれて出来た赤い痕を確認してると、Sub性が喜びに満ち溢れてしまうのか、笑みが自然とこぼれてニヤニヤとしてしまう。
ああー、俺、ドM全開になってる。
なんて、清々しい気分なんだ・・・っ!
「ドMサイコーっっっ!!」と、思わず、歓喜の雄叫びを上げる。
と、同時に、昨日のPlayで、首を掴まれ、首筋に爪を立てられた時の眞門の顔が脳裏によみがえる。
そう言えば、あの時の知未さん、とても怖い顔をしてたのに、何かに怯えているようだった。
何か不安なことでもあるのかな・・・?
「お父様とのことが関係しているのかな・・・?
だったら、誘いが来たら、やっぱり無視するべきだよな・・・?
でもな・・・」
正解が分からない星斗は、「ハアー、ただただ憂鬱だ・・・起きなきゃ良かった」と、呟いた。
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