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拓未からの誘い②
拓未からの誘いが来た時は、結局どうすれば良いのか?
正解が分からず、憂鬱な気持ちで一日を過ごしていたが、夕暮れを迎えてもまだ、拓未からの誘いの声はかからなかった。
もう夜を迎える。
このままだと、拓未からの誘いは来ることはないだろう。
星斗がそう思って、ホッと胸をなで下ろした矢先、星斗のスマホが着信を知らせた。
スマホの画面を確認すると、【知未の父】と、着信相手の名前が表示されてある。
・・・へっ!?
なにこれ・・・?
なんで、こんなものが表示されてるの?
なんで、お父様が俺のスマホの電話番号を知ってるの・・・!?
ひょっとして、昨日、Glareで催眠を掛けられた時に、俺と連絡先の交換をした・・・?
いやっ、怖いっ、・・・待って、全く記憶にないんですけど!?
星斗はいきなりのことに焦りながらも、眞門の言いつけを守って、通話に出るかどうかを悩んだ。
一向に鳴りやまない着信に、段々と申し訳ない気持ちになり、これは無職であろうと社会人のマナーとして、恋人の父親に対しては、きちんと通話に出てお断りを伝えるべきだ、と考え直す。
「はい」
星斗は断る旨を直接伝えようと、意を決して通話に出た。
『やあ、星斗クン。
なかなか出てくれなかったけど、今、何か手が離せないことでもしてるのかい?』
「いえ、そういうわけでは・・・」
『そう。なら、今から、私の家があるビルにいらっしゃい」
「あ、そのことなんですが・・・」
『私の自宅じゃなくて、四階にある【Play Room】にいらっしゃいね。
星斗クンにどうしても見て欲しいものがあるんだよ。
それを見ながら、今後のことをゆっくりと私と話そうじゃないか』
「今後のこと、ですか?」
『ああ、知未にもそう伝えてあるよ。話は通してあるから、何も心配はいらないよ』
「えっ、本当ですか!?」
眞門から言いつけられた話と食い違うので、星斗は混乱する。
『そっちに使いの者をやったからね。
もうじき着くと思うよ。
彼と一緒に来ると良い。
待ってるからね』
拓未はそう言うと、一方的に通話を切った。
「あの、待ってください・・・っ!! 本当にその話を信じて・・・良い・・・んです・・・か・・・」
星斗が真相を確かめようとする前に、通話が切られてしまった。
「・・・しまった! 知未さんのお父様が超自由人なのを忘れてた!! どうしよう・・・!?」
星斗は頭を抱えた。
本当にお父様の言葉を信じても良いのかな・・・?
本当に知未さんから了承がもらえているのかな・・・?
困った挙句、星斗は眞門に直接聞こうと、眞門のスマホに連絡してみるが、大事な仕事中なのか、すぐに留守番電話の機能へと繋がってしまう。
「まずいな・・・、どうしよう・・・」
そう洩らすと同時に、インターホンが鳴り響いた。
モニターを確認すると、見た目は20代半ばぐらいに見える若い男性が映し出された。
「はい」と、応答する星斗。
「眞門拓未さんに、知未さんのフィアンセの星斗さんと言う方を連れてきて欲しいと頼まれた、笹ノ間 という者です。
星斗さんはご在宅ですか?」
「あ、少々お待ちください」と、とりあえず、そう返答すると、「どうしよう、知未さんのフィアンセだって・・・」と、そう言われたのがとても嬉しくなって、頬赤らめてにやける。
「・・・・・」
いやいやいや、違うっ。
喜んでる場合じゃなかったっ!!
「どうしよう・・・っ、仕方ないっ!」
星斗は散々悩んだ挙句、眞門のスマホにメッセージを残した。
【今から、お父様に会いに行ってきます】
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