185 / 311

拓未の役目③

「今から、あの小部屋の中でね、未経験のSubに初めての性的なPlayを経験してもらうんだよ」 「えっ・・・」 星斗は信じられないと驚いた。 「Playを経験してみたいが、Sub向けの風俗へ行くのは躊躇いがある、マッチングアプリで出会うとしても危険な目に遭うかもしれない。 Play未経験で相手を見つける為の紹介所に行くのも気が引ける。 そんな思いで一歩を踏み出せないでいるSubの者の為に、あの中で初めてのPlayを受けてもらうんだよ」 「ここにいる全員に見られて、ですか?」 「ああ、勿論。 はしたない姿を不特定多数に晒すなんて、Subにとったら至福の悦びだろう?」 「・・・・・」 全く同意できない星斗は、 「Subってそういう生き物なんだ・・・」と、まるで他人事のように、心の中で呟いた。 星斗と拓未がそんな話をしていると、突然、室内の明かりが落とされ、半球体状の小部屋の中だけが白く光り照らされた。 透明のガラスで囲われた、中の様子が全て覗き見できる状態の半球体状の小部屋の中に、目隠しをされた黒の下着一枚の半裸の若い男が現れた。 目隠しをされた若い男は未だ経験のない体験を味わう恐怖からなのか、緊張で体が小刻みに震えている。 すると、目元を覆う仮面をしたネクタイ姿の男がどこからとなく現れた。 張り付いたワイシャツの盛り上がった胸元の筋肉から、とても鍛え抜かれている体であることが見て取れる。 星斗はすぐに、仮面をしたネクタイ姿の男はDomだと分かった。 眞門もそうだが、Domの男はなぜか体を鍛えている傾向が多いからだ。 「今夜は星斗クンのために、特別に、男のDomと男のSubで用意したよ」と、小さな声で拓未が星斗に向かって囁いた。 仮面の男は、緊張で体を震わせている目隠しの半裸の男の耳元で何やら囁く。 星斗は自分の経験上、「Stop(止まれ)」のCommandが発しられたのだと思った。 星斗の想像通り、目隠しの若い男の体の震えがピタリと止まった。 仮面の男が背のついた木の椅子を持ち出すと、目隠しの若い男に「Sit(座れ)」と、Commandを発する。 目隠しの若い男は、手探り状態で椅子に座った。 仮面の男は椅子の背に回ると、目隠しの男の腕を叩き、「Come(両腕をよこして)」と、Commandを告げる。 目隠しの男はゆっくりと椅子の背の外側に両腕を回した。 と、仮面の男は己のネクタイを外すと、目隠しの男の両手首に巻き付け、目隠しの男から両手の自由を奪った。 目隠しの男は先程まで緊張で体が震えていたのが嘘のように、鼻息が徐々に荒くなってき、興奮が高ぶっている様子が伺える。 仮面姿の男は「Open(足を開け)」と、Commandを発する。 目隠しの男は下着一枚の姿で両足を大きく開いた。 仮面の男は、目隠しの男の股間に手をやると、興奮で既に盛り上がっている部分を下着の上から優しく撫でてやる。 「もう、こんなにしてるなんて・・・賢い子だ、good boy」 仮面姿の男がそう告げると、見知らぬSubとDomのPlayが目の前で始まった。 小部屋で始まった見知らぬSubとDomのPlayを、星斗はどんな様子で見ているか?  その様子を観察することが、今夜、星斗を呼び出した、マスターとしての拓未の本当の目的だった。 拓未は気づかれぬよう、隣に座る星斗にそっと目をやる。 「!」 拓未は星斗の顔を見てギョっとする。 眉間に皴を寄せた、とても険しい顔で、小部屋で行われているPlayをじーと見ているからだ。 その顔はまさしく、「汚らしい」。 そんな軽蔑を込めてる顔だ。 拓未は一応、確認する。 「・・・星斗クン、キミは視力が悪いのかい?」 「あ、いえ・・・」と、拓未には愛想笑いで返したが、星斗はまた小部屋の方に視線を戻すと、また、蔑むかのような目つきに変わった。 確かめたかった目的を果たした拓未は、「この子の依存度はかなりの重症だな・・・」と、絶句して、頭を抱えた。

ともだちにシェアしよう!