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拓未の役目⑤

「それで、キミは今は平気なんだな?」 「はい・・・一度別れることになってしまいましたが、でも、乗り越えました。 なので、よりを戻してくださいって俺からお願いしたんです」 「それじゃあ、知未は?」 「へ?」 「知未の方はどうなんだ?」 「知未さん・・・?」 「知未の方に後遺症は起こらなかったのか?」 「知未さんに、後遺症・・・?」 拓未が眞門の何を心配しているのか?  星斗には全く分からない。 「昨日のPlayで、どうして、殺さ(サブドロップ)れても良いなんて、キミは言ったんだ?」 「えーっと・・・」 星斗は昨日のPlayを思い出す。 「確か、知未さんに言われたんです・・・俺以外のDomの言うことを聞いたら、『殺す(サブドロップ)からな』って・・・だから、俺はあなたになら殺さ(サブドロップ)れても良いって・・・」 その一言を聞くな否や、拓未は全てが終わりを告げた、そう思わせるほどの悲痛な表情へと変わった。 「・・・あいつがキミに言わせたんだな・・・。 クソっ、あいつ、私に嘘をついたな・・・っ!」 その一言をもらすと、今度は、拓未の表情がみるみる怒りに満ちた顔へと変わっていく。 拓未の異変が何なのかさっぱり分からない星斗は、「・・・あの、何か問題でも・・・?」と、恐る恐る聞いてみる。 と、その時、『Play Room』の扉が勢いよく開いた。 「父さん、どういうつもりですかっ! もう、いい加減にしてくださいっ!!」 と、眞門が怒鳴り声をあげて入って来た。 眞門はソファで話す星斗と拓未を見つけるや否や、怒り心頭といった表情で近づいてくる。 「また、星斗を勝手に連れ出すなんてっ、本当に弁護士を立てて訴えますよっ!」 眞門がそこまで言うと、拓未はさっと立ち上がって、星斗を背に隠すようにして、眞門の前に立ちふさがった。 「この結婚は絶対に許さん!!」 拓未は眞門に向かって、いきなり怒鳴りつける。 「!」 さっきとはまた違うことを言い出した拓未に、「本当に先の読めない人だ」と思い、星斗はただ呆気にとられる。 「なんなんですか、急に?」 「お前、私に嘘をついただろう?」 「・・・・・」 「お前、Sub drop(サブドロップ)症候群を発症しているんじゃないだろうな?」 「・・・・・」 「星斗クンのことをSub drop(サブドロップ)させたくて、させたくて、その欲望に憑りつかれて、仕方なくてよりを戻したんじゃないだろうなっ!」 拓未の怒鳴り声はホール全体に響き渡った。 勿論、カウンターバーにいた笹ノ間にも、その声は聞こえた。 「・・・・・」 眞門は黙り込んで、何も答えようとしない。 眞門の様子をおかしく思った星斗は、 「・・・知未さん?」 と、心配になって、声を掛ける。 「・・・そんな訳ないじゃないですか。帰ろう、星斗」 「ダメだっ! きちんと納得できる答えを聞かない限り、星斗クンは絶対に渡さないっ!」 拓未は毅然として、眞門の行く手を立ち塞ぐ。 「どうした、なぜ、すぐにきちんと否定しないんだ?」 「・・・・・」 「どれだけ重大なことか、お前も分かっているだろう?」 「・・・・・」 「まさか、本当にそうなのか?」 「・・・・・」 「残念だ・・・まさか、罰をお前に与えるなんて、息子をSubに調教しなければならない日が来るなんて・・・考えもしてなかったよ・・・」 そう言うと拓未は悔しそうに、瞳に涙をいっぱいに溜めた。

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