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絶望の選択肢
星斗は現状が飲み込めず、ただ呆然としていた。
・・・罰として、知未さんがSubに調教されるってどういう事・・・?
「・・・あの、どういう」
星斗が拓未に尋ねようとしたところに、「雫ちゃんっ」と、拓未がバーカウンターにいる笹ノ間を呼び寄せる。
「はいっ、なんでしょう」
笹ノ間は食器の片付けを後回しにして、すぐに拓未の元に駆け寄る。
「星斗クンを今すぐ私の部屋に連れて行ってくれ」
「!?」
星斗は一体、何事かと驚く。
今、眞門と拓未の間で何が起きているのか、さっぱり理解出来ないからだ。
「分かりました・・・。行きましょう、星斗さん」
「いや、でも・・・」
笹ノ間は星斗の腕を掴む。
「さあ」
「・・・待ってくださいっ!」
星斗は笹ノ間の掴んだ手を払いのけた。
「一体、どういう事なんですか?
知未さんがSubに調教されるってどういう事なんですか!」
星斗は誰でもいいから説明してくれ!と、訴えるように叫んだ。
「・・・・・」
しかし、誰も口にしたくないのか、一様に黙り込む。
「・・・ねえ、知未さんっ、どういうことなんですかっ、教えてくださいよっ!」
星斗は眞門を見つめた。
「・・・Sub dropが起きてしまうと、Subだけじゃなく、Domの方にも問題を引き起こすことが稀にあるんだ・・・」
眞門は星斗を見つめ返すと、悲しい顔を浮かべて、説明を始めた。
「Playをする上でSub dropを絶対に起こしてはいけない。
それはSubの心が壊れてしまったり、最悪、死ぬ可能性があるから、そう言われている。
けど、Dom側にも深刻な問題を起こす場合があるから、きつくそう言われてるんだ。
それが・・・Sub dropの禁断症状」
「Sub dropの禁断症状?」
「DomがSub dropを経験してしまうと、SubをSub dropさせたく、させたくて、たまらなくなるんだ」
「えっ・・・」
星斗は何も知らなかったので言葉を失う。
「星斗クン」
拓未が横から口を挟んでくる。
「本来、Domはね、Subが要求する欲望を受け止めてあげて、それをうまく昇華してあげることに歓びを感じる生き物なんだよ。
自分の導きでSubが悦びに震えた顔をする。
Subは喜んで、また、こういう悦びをあなたに与えて欲しいと強請る。
そして、また、その悦びを自分が与えてやる。
これがDomの本来の性癖なんだ。
だがね、そんなSubが求める性の欲求を一切無視して、自分の欲望だけを満たそうとする不届き者のDomがいる。
これがまさしくSub dropを起こす要因のひとつだ。
だから、そういう悪いDomがいると見つけては、調教部屋に監禁して、Subに性転換させる。
それがマスターの古くから仕事のひとつなんだよ」
「そんな・・・」
「Domが自分の快楽だけをSubに押し付けて、SubがSub dropしてしまうと、Domの脳は勘違いを起こしてしまう。
自分の導きで、Subが最も高みで昇天出来たってね。
これが正しいPlayなんだって。
その快楽はDomにとって、言い知れぬほどの快感をもたらすと言われている。
一度、経験すると忘れられない快楽だと」
「・・・じゃあ、知未さんは・・・それを発症してるかもしれない・・・?」
「どうなんだ、知未。
今、こうしている間も、星斗クンをSub dropさせたくて、させたくて、うずうずしているのか?」
「・・・・・」
「知未さん・・・」
「ちゃんと答えなさい!」
「・・・分からないっ」
眞門は声を大にした。
「分からない・・・っ、分からないんです!」
眞門は正直に答えた。
「本当に分からない・・・今、言えることは、発症してるかもしれないし・・・してないかもしれない・・・」
眞門は拓未を見つめた。
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