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絶望の選択肢②
「星斗を大切にしたい。
ただ、それだけが俺の本音です。
けど、俺の中には得体の知れない何かがいるのも確かで。
そいつは思い通りにいかないと、必ず現れる。
そいつが暴走したら、また、前みたいに星斗をSub dropさせるかもしれない。
それが症状だって言われたら、そうなんだと思う。
けど、決して、Sub dropさせたくてよりを戻したんじゃない。
愛してる。
結婚したいと思ったのも、星斗が側にいてくれないと生きる意味がないと思ってるから。
Domに生まれてきて良かった。
そう思わせてくれたのは、星斗が初めてなんだ」
「知未さん・・・」
「からかうと楽しいし、イタズラしてもめげないし、お仕置きだって文句言わず受けてくれるし、俺がネチネチ説教する悪い癖もうまく受け流してくれるし、何より、こんなに愛していても傷つけることでしか愛せない俺をなによりも一番に信頼してくれてる。
だから、これからも側に居たいし、側に居て欲しい。
だから、俺は・・・今、発症していないことを祈るしか出来ない・・・」
「・・・知未さんっ」
自分が知らない間に、知未さんがこんなにも苦しんでいたなんて!
居てもたってもいられなくなったのか、星斗はソファから立ち上がると、眞門に抱き着いた。
「・・・ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
「星斗・・・」
「俺がよりを戻して欲しいなんてお願いしなければ良かったんだ・・・っ、知未さんは二人の為を思って、あの時、別れを選んだのに・・・」
「違うよ。俺が過去に無茶したことが全部悪いんだ」
眞門は星斗を慰めるように抱きしめてやる。
「違うっ、やっぱり、俺が悪いんだ。
俺がお願いしたのに。
俺が知未さんにご主人様になって欲しいってお願いしたのに、俺、自分の気持ちばかり考えて、知未さんのことを何も考えてなかった」
「星斗はSubなんだから、それでいいんだよ」
「違うよっ。
俺、ずっと気づいてた。
知未さんからDomらしさが時々消えること・・・。
あれ、俺のことを傷つけないために、必死で抑えつけてたんでしょうっ。
俺、様子が変なことに気づいてたのに・・・。
どうして、「大丈夫ですか?」って、言ってあげなかったんだろう。
俺が一言でも声を掛けてれば、知未さんはこんなにひとりで苦しまず、俺に苦しい胸の内を伝える事が出来たかもしれないのに・・・。
俺、Normal育ちをいいことに何も学ばないで、ちゃんとしたSubになろうともしないで、本当にごめんなさいっ」
「いいんだよ、星斗はそのままでいいんだよ。
何も悪くないんだからな」
胸の中で悲しむにくれる星斗を眞門は優しく慰める。
「・・・それで、お前はどうするつもりでいるんだ、発症してた場合は?」
拓未が無情の声で投げかけてくる。
「発症してた場合は・・・星斗とは勿論、別れます。後は父さんの好きにしてください」
星斗は、まだ離れたなくないとばかりに、眞門の背に回していた両手でギュッとスーツを掴んだ。
「それが出来たら良いが、無理なんだ」
「え?」
「出来ないんだよ」
「どうしてですか?」
「お前と星斗クンが別れることだよ」
「?」
眞門はその言葉の意味が分からない。
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