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絶望の選択肢③

「でも発症してた場合は嫌でも別れないと、俺は星斗を最悪、殺すかもしれない・・・」 「でも、別れても星斗クンを殺すことになるぞ」 「・・・へ?」 「だって、Playしてやる相手がこの世にお前しかいないんだから」 「?」 「さっき、星斗クンのお前への依存度を確かめさせてもらったんだよ。 私から見ると、とてもおかしなことばかり言うSubだからね。 結婚させるためには、なんとか把握しておかないと思って。 最悪だ。 星斗クンは他のカップルのPlayをおぞましい、そんな顔で見てたんだよ。 感想を聞いたら、全く羨ましくないそうだ。 目隠しされることも人前で辱めにあうことも、見知らぬDomとPlayするなんて信じられない、と。 そんな星斗クンがお前以外のDomとPlayしたらどうなると思う? 星斗クンは即、Sub dropだ」 「・・・・・」 「どう思う?  Subとして異常だろう。 Subの本当の悦びを彼は知らないんだよ。 屈辱されるSubの悦びを彼は知らないんだよ。 誰が教えなかった? 誰がそんなふうに調教したんだ!」 拓未はとても怒りを滲ませた顔をした。 拓未の言いたいことが分かったのか、眞門は思わず、下を向いてしまう。 「どこぞの愚かなDomが自分だけで全てを汚したくなって、『俺しか見るな』とでも言って、無様な調教でも施したんじゃないだろうなっ!」 拓未は眞門をまるで叱りつけるように怒鳴った。 「いいか、そんなバカな調教をお前がしたせいで、星斗クンにSubの悦びを与えてやれるDomがこの世にお前しかいなくなったんだぞっ。 何を考えていたんだ、お前はっ!  しかも、そこにSub dropまで起こしていたなんて・・・」 拓未は信じられないとばかりに天を仰いだ。 「・・・・・」 反論する余地がない眞門は俯いたまま、恐縮する。 「お前が発症してたら、星斗クンの運命はどうなると思う?」 「・・・・・」 「・・・全くっ、私の方からお前みたいなバカ息子との縁は切ってやるわっ!!」 と、激しく怒鳴りつけた。 眞門は事の重大さが自分が想像していた以上のことなのかもしれないと、今更ながらに悟った。 「完全に八方塞がりだぞ。 どうするんだ? お前が発症してたら、星斗クンはどっちにしてもSub drop行きだ」 「・・・・・」 「お前は大切に扱ってきたつもりかも知れないがな、結局は愛したSubを不幸にしただけだ」 「・・・・・」 「稀に見る無様なDomだな」 拓未は相当頭に来ているのか、眞門が最も嫌がる言葉で罵った。 眞門はその言葉が相当堪えたのか、失意の底に落とされた気分だった。 「・・・なら、このままでいいですっ」 星斗が横から口を挟んだ。 星斗は拓未を熱い眼差しで見つめると、 「俺は、知未さんになら殺されても良いです」 と、再度、口にする。 「星斗・・・」 愛するSubにそんなことを言わせてしまった。 眞門は拓未が言うように、自分は本当に無様で愚かなDomだと思い、とても情けない気持ちで胸が締め付けられる。 「君ならそう言うと思ってたよ。 でもね、私も"マスター"としての立場があるんだよ。 しかも、バカ息子が起こした問題だ。 責任を取らないと、示しがつかないんだよ」 拓未は「ハアー」と、大きな溜息をつくと、「雫ちゃん」と、呼びかける。 「なんでしょう?」 「私のお願いを聞いてもらえるか?」 「はい、おじさまの言う事ならなんなりと」 「このバカ息子の愛人(パートナー)になってやってくれないか」 「!」 「父さん・・・っ!?」 「仕方ないだろう、お前は発症してても、星斗クンのPlayの相手をしてやらなきゃならないんだぞっ、それにはお前の欲求を分散させる方法しかない」 「けど・・・そんな酷いこと・・・星斗を更に傷つけるような真似・・・俺には出来ない・・・それじゃあ、俺は星斗を一生傷つけるような愛し方しか出来ないじゃないかっ」 「知未さん・・・」 「仕方ないじゃないか、全て、お前が悪いんだろう」 「そんな・・・っ、そんなことしたら・・・あなたとまるで同じになるじゃないかっ!」 「私と・・・?」 「Normalの母さん相手にPlayしてたじゃないかっ。 ・・・母さんを傷つけることでしか愛せなかったあなたと同じになるじゃないか・・・っ。 俺はあなたなんかと同じになりたくないっ」 眞門はそう訴えると、悔しそうに下を向いた。 「・・・すまない、星斗。 俺にはそれは出来ない・・・あの人と同じように星斗を愛したくない・・・折角、俺を選んでくれたのに、すまない」 そう口にした後、眞門はとても申し訳なさそうに星斗を見つめた。 「!」 星斗は咄嗟に眞門を慰めるように優しく抱きしめた。 眞門が壊れる。 星斗はそう思った。 何よりも無様に落ちぶれることを嫌う眞門だ。多分、このままだと壊れてしまう。 今度は俺がこの人を守らないと。 Subだけど、それでもなんとか守ってあげないと。 そう思と、体が勝手に動いていた。 「大丈夫です。 俺は大丈夫ですから」 「・・・・・」 「いいですか、俺にとって、知未さんは希望です。 だから、知未さんとなら、地獄の果てまで行く覚悟があるって、簡単に口に出来るんです。 知未さんという希望がある限り、俺はどこへでも行きます」 「・・・・・」 「知未さん、大丈夫です。 俺、何も怖くないですから。 知未さんと居たら、何も怖くないですから。 知未さんが選んだ道で大丈夫ですから。 だから、もう、自分を責めないで。 俺、誓ったでしょう。 何があったって、あなたのそばから離れないって。 俺を信じてください」 「星斗、ごめんな・・・本当にごめん・・・」 自分の不甲斐無さを反省すると、星斗を抱きしめて、眞門はそのまま泣き崩れてしまった。

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