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嵐を呼ぶ男③

と、又そこに、「拓未おじ様、荷物が届きました」と、笹ノ間が宅配物のダンボール箱を持って、リビングに入って来た。 「!」 笹ノ間は明生を見るなり、血相を変えて、ありえないぐらい驚いた顔を見せる。 笹ノ間はさっと顔を背けた。 「・・・?」 明生は見覚えのある顔だともでも思ったのか、笹ノ間にゆっくり近づくと、覗き込むようにして、笹ノ間の顔を確認する 「・・・えっ、笹ノ間!? えっ、ひょっとして、笹ノ間なの?!」 明生は、信じられないとばかりに驚嘆の声を上げる。 明生はひと目見ただけでは、誰なのか判別できなかったようだ。 「雫ちゃん、明生クンと知り合いなのかね?」 「あの・・・」 「雫・・・? やっぱり、笹ノ間雫なのか!?」 明生は、正体が判明すると、また信じられないとばかりに声を上げた。 「え、どうしたの、この姿・・・?  俺の知ってる笹ノ間と全然、違うんですけど・・・っ。 え、なんで、そんな垢抜けてんの?  奥さんの趣味なの?」 「・・・・・」 「明生クン、ひょっとして、雫ちゃんと知り合いなのかい?」 「はい。俺、前に居た学校でこの先生(笹ノ間)にレイプされたんです」 「!」 えっ!? 様子を静かに見守っていた星斗は思わず絶句した。 「ちょっと、変な言い方しないでよっ。あれは合意のもとで始めただろう」 笹ノ間が急に慌てだす。 「合意・・・? 高校生に手出しといて、合意なんて言葉通用するとでも思ってんの? 元教師の笹ノ間先生」 「・・・・・」 「俺のチンコを舐めたくて、"Lick"っていうCommandを教えてくれたのは、笹ノ間先生じゃなかったっけ?」 「!!」 その言葉で星斗はすぐに勘付いた。 あ、あれだっ! 明生が以前話してくれた、前に在籍していた高校の時にいたパートナー。 確か、高校のダメ教師だって言ってた人。 そう言えば、許嫁がいて、真剣な関係にはならないって言ってた。 まさかの、それが笹ノ間さんなの!? 嘘でしょう!? 笹ノ間さん、元ダメ教師なんかに全然見えないんですけど・・・。 「こんなところで何してんの?  てか、見た目が変わりすぎてて、マジで引くぐらいびっくりなんですけど・・・?  あの根暗で変態チックな容姿はなんだったの?」 「・・・・・」 「ひょっとして、Domを引っ掛ける為に演じ分けてるのか?  へえー。 ・・・お前、やっぱり、とんでもない性悪のSubだったな・・・」 明生が意味ありげに伝える。 「・・・・・」 笹ノ間は顔を横に向けたまま、何も答えなかった。 「雫ちゃん、本当かい? いくら、相手がDomだからと言って、未成年に手を出すなんて最低な行為だよ」 拓未は裏切られた、そんな落胆した顔を見せている。 「いえ、あの、おじ様、これは違うんですっ! ・・・その、えっと・・・あの・・・」 笹ノ間はこのままでは拓未に嫌われてしまうと焦り、何か言い訳を考えるが、明生がいる手前、都合の良い言い訳が出てこない。 「雫ちゃんにはがっかりだな。 けどね、雫ちゃんを一方的に責めることも出来ないな。 明生クンのDomの魅力に逆らえなかったんだろう?」 「へ?」 「どうしても、彼に飴と鞭を与えてもらいたかったんだろう。 キミでも明生クンのDomの魅力には勝てなかった・・・これでまさしく確定だな」 「おじ様・・・あの・・・?」 「雫ちゃんね、明生クンは"マスター"だよ」 「!?」 笹ノ間は酷く驚いた顔をする。 そして、「嘘・・・」と、笹ノ間は小さく洩らした。 明生は、混乱している様子の笹ノ間にゆっくりと近づいていくと、壁際に追い込んだ。 そして、壁をドーンっ!と、思いっきり両手で突くと、「笹ノ間、答えろ。ここで何してんだ? 俺のことなんか何でもありませんでした、みたいな顔して簡単に終わらせて・・・その後は結婚して幸せに暮らしてたんじゃなかったのか?」と、高圧的に見下ろす。 「・・・・・」 「俺、あの時にお前に言われたこと、絶対に許さないからな」 「・・・・・」 明生は拓未に視線を合わせると、 「あの、笹ノ間さんはここで何をしていらっしゃるんですか?」 と、さっきとは人が変わったように、急に丁寧な言葉遣いに変わった。 「雫ちゃんには今ね、私の仕事のお手伝いをしてもらってるんだよ。結婚がダメになってね」 「おじ様!」 「もう、彼にはバレてるよ」 「じゃあ、俺が弟子入りすれば、笹ノ間さんを自由に扱ってもよろしいでしょうか」 「!」 笹ノ間は驚く。

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