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あなたのために出来ること②

「星斗、来てくれてありがとう。絶対、応じてくれないと思ってた」 眞門は星斗がいる事に、とても嬉しそうに微笑んだ。 まるで何かを吹っ切ったくらい、星斗とのPlayを楽しみにしている、そんな笑顔だ。 「ごめんな、最後になるかもしれないPlayが、あんな怖い顔をしたふたりに見られながらになるなんて」 小部屋の外で見守る、拓未と明生の姿をチラッと見ると、眞門は申し訳なさそうに苦笑いした。 「知未さん、また痩せてる・・・」 上半身裸で現れた眞門の体が以前より、また薄くなったのを見て、星斗は心が痛くなった。 「ああ。 俺、ダメだな。 星斗が側に居てくれないと、絶対こうなるみたい」 と、また苦笑いする。 その苦笑いさえ愛おしいと思う星斗は、やっぱり、ここにきて心が鈍る。 ダメだ。 何かあった時に俺が殺すことになるなんてイヤだ。 出来ないっ! 「知未さん、俺、やっぱり無理・・・っ」 星斗がそこまで言いかけた時、眞門が片膝をついた。 そして、星斗の為に特別に作った首輪(カラー)の入った箱を差し出す。 眞門は星斗を見上げると、とても嬉しそうにして見つめた。 「渋谷星斗さん、俺はあなたに出会えた事、あなたと愛し合えたことをとても幸せに思います。 この先、何が起こったとしても、あなたに出会えたことを後悔することは絶対にありません。 あなたは俺が探し求めていた希望だからです。 俺のこれからの全てをあなたに捧げさせてください。 どうか、俺と結婚してください」 「知未さん・・・」 星斗は思ってもなかった眞門のプロポーズに驚く。 「これを受け取ってもらえますか?」 眞門が箱の蓋を開ける。 星斗はパートナーの契約を結ぶ首輪(カラー)を贈られたことが分かる。 「ずるいですよ・・・」 星斗はそう口にすると、瞳に涙をいっぱいに溜めた。 「こんなの、絶対に受け取るじゃないですか・・・受け取ったら、もう、逃げられないじゃないですか・・・」 星斗は溢れる涙を抑えながら、ゆっくりと首輪(カラー)を手に取った。 首輪(カラー)は本革の両端を繋げるようにして、金のチェーンが輪を作ることで、首輪を形成している。 初めて見るタイプの首輪(カラー)に、星斗は眞門が自分の為に作ってくれたのだと分かった。 「・・・勿論、喜んで」 「ありがとう」 眞門はとても嬉しそうに微笑んだ。 「ごめんな、こんな場所で。 もっと、ロマンティックなところで言う予定だったのに。 最後まで、ダメダメでごめん」 星斗は、首を横に振るだけで精一杯だった。 「じゃあ、俺が首輪(カラー)をつけてさせてもらって良い?」 「はい」 その返事に、眞門は嬉しそうに微笑むと、星斗から首輪(カラー)を受け取り、金のチェーンが胸元に来るように星斗の首に付けてやる。 星斗は、念願の首輪をようやく付けてもらったことで、不安で緊張していた顔が思わず緩んだ。 「やっぱり、すごく似合ってる。 こんなことなら、変な意地張ってないで、もっと早く付けてあげれば良かった」 眞門は目に焼き付ける様に、星斗をじっくりと見つめた。 「発症してなかったら、必ず結婚しよう」 「はい」 首輪を付けてもらったことで、星斗も自分達の未来が輝かしいことに賭ける、そう心に決める。 眞門の笑みが静かに収まると、 「・・・じゃあ、始めようか」 と、口にした。 「はい・・・」 そう返事したものの、星斗は恐怖からか、思わず眞門に抱き着いた。 眞門は、星斗を優しく抱きしめてやる。 「・・・星斗、ひとつお願いがあるんだ」 と、耳元で囁く。 「なんですか?」 「Safe wordを変更して欲しいんだ」 「分かりました」 「Safe wordは『知未さん、さようなら』だ」 「・・・はい」 星斗は溢れ出る涙を必死で堪え、返事をした。 「星斗、愛してる」 「俺も何があっても、知未さんを愛しています」 見つめ合うと、口づけをするふたり。 星斗と眞門の、最後になるかもしれないPlayが始まった―。

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