208 / 311
共謀②
ガラス張りの半球体状の小部屋の中にいる、張りつめた様子の星斗と眞門を、少し離れた外野から拓未と明生が静かに見守っている。
「いよいよ始めるみたいだな」と、星斗がお座りした様子を見て、拓未は口にした。
そして、隣にいる明生の表情をそっと伺う。
ただ、じっと、小部屋の中にいる星斗らの様子を見つめたまま、明生は表情を強張らせている。
今から起こる不測の未来に、自分の責任の大きさを感じている様子だった。
「ここは私ひとりで充分だから、君はこの部屋の外に出てると良い」
拓未は明生を気遣った。
まだまだ多感な成長期に身内のPlayを目にするなど絶対に避けたいはずだ。
しかも、どんな結末が待っているのか分からない。
もし、愛する兄の酷く傷つく場面に遭遇したら・・・?
自分の責任の重さを痛感してしまうだろう。
まだ若い明生の将来を摘むわけにはいかない。
トラウマを抱えたまま生きていくことになるなんてあってはいけない。
拓未は明生の将来までも気遣って、そう言葉をかけた。
が、
「いいえ。俺が言い出したんで」
明生は表情を強張らせたままでも、拓未の提案を頑なに受け入れなかった。
「でも、このままだと、お兄さんの・・・あられもない姿まで見なきゃいけないことにもなるぞ」
「バカ兄貴のバカな姿は見慣れてますから」
「見慣れてるって・・・」
拓未は明生の強情さに呆れた。
「今から、お兄さんは人様の前では口に出来ないような行為を始めるんだぞ。そこまではさすがに見慣れていないだろう」
「じゃあ、師匠はどうなんですか? 息子のPlayを見慣れてるんですか?
師匠こそ、今、どんな気分で見てるんですか?
マスターらしく、後で点数でも付けて補習でもしてあげるつもりでいるんですか?
・・・もし、0点、いや、マイナスだった時はどうするつもりなんですか?」
そう言うと、今度は明生が拓未の顔色を伺った。
「何かあった時、師匠の方こそ冷静じゃいられないんじゃないですか?」
「・・・・・」
「俺は失わないけど、師匠は失います。大切な人を」
「・・・・・」
「そうしたのは俺です。だから、俺は最後までここにいなければならないんです」
拓未は明生の強情さに呆れたが、マスターの資質としてとても頼りがいのある人間だと内心は喜んでいた。
あわよくば、このようなことに遭遇するのは避けてやりたかったとも思った。
「・・・分かった。好きにしなさい。けど、私は君に心配されるような弱い人間じゃない」
「俺もです」
どうしても、互いにDomの気の強さが出てしまう。
拓未はこれ以上、明生の意志を尊重し、気遣うことを止めた。
ともだちにシェアしよう!