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共謀③
「違う、だろう」
小部屋の中で、眞門の冷めた声が飛んだ。
「えっ・・・」
星斗は思わず、手に掛けていた眞門のボトムスのチャックから手を放した。
選択ミスが許されない星斗は、そのまま委縮してしまう。
眞門は蔑む、そんな顔を浮かべると、
「誰がソレを出して良いって許可したんだ?」
と、呆れたように述べた。
「誰が直に口にして良いなんて許した?」
「・・・・・」
「俺の色の染めて欲しいんだろう?」
そう言った眞門は、星斗を見下す。
「俺は前にきちんと教えたはずだよ」
「・・・・・」
「常にご主人様の許しを請えって」
「・・・・・」
星斗は思わず唾を大きく飲みこんだ。
眞門の冷淡な口撃に、なぜかゾクゾクと興奮してしまうからだ。
こんな時に何考えてんだ、俺っ!
星斗は自分を窘めた。
「星斗はこれが一度でも欲しいと思ったことはなかったのか?」
「えっ・・・」
星斗は眞門を上目遣いで見つめる。
「そんな時はどうすれば良かった?」
眞門がどこか優しい瞳でそう問いかける。
「!」
星斗はその顔を見て、焦った。
どんな結末を迎えてしまうかも分からない―。
そんな緊迫した状況下なのに、眞門の匂い、冷徹な言葉、そして、それとは反するようにリードから伝わる温かさが、星斗のSubの心をじくじくと刺激していく。
俺が冷静でいなきゃいけないのにっ!
「そんなときはどうすれば良かった?」
眞門の乱暴な問いかけにゾクゾクとしながら、星斗は自分なりに考える。
星斗は、ゆっくりと眞門の股間に顔を近づけた。
そして、ボトムスの上から眞門の局部を口で探し出すと、それを丁寧に舌を使って舐め始めた。
「お利口だよ、星斗」
星斗の判断は正しかったのか、眞門はその行動を褒めた。
眞門に褒められた星斗はSub性をまた刺激され、ボトムスの向こうにある眞門のペニスに夢中になる。
ゆっくり。
丁寧に。
口と舌を使い、ボトムスの布の上から何度も何度もしつこく愛撫する。
眞門のボトムスの股間周りは星斗のイヤらしい唾液でびしょびしょに濡れていく。
「私はこれが欲しいです。」
下品なものを欲しがる、ある意味、人としての最もみっともない姿。
しかも、それを拓未や明生にも目撃されている。
それを思うと、なぜか恥ずかしさを上回り、Subの性質によるものか、星斗の興奮は更に高まっていく。
俺がご主人様に下品な奉仕している浅ましい姿。
それを誰かに熱く見られているなんて・・・。
俺は、俺のこんな姿を人には絶対に見られたくないと思ってた。
なのに・・・。
もっと見て欲しいと思う自分が今、俺の中に溢れてる。
なにこれ・・・。
こんなの初めて・・・。
恥じらいの全てが興奮へと変わっていく。
どうしよう。
俺、Sub性に持っていかれてる・・・。
冷静にいられないかもしれない・・・。
いつの間にか、星斗はボトムスの上からの眞門のペニスに、口と舌で精一杯奉仕することに夢中になった。
すると、星斗の執拗な導きにより、眞門のシンボルは徐々に姿を現し、ボトムスの上からでもくっきりと分かるぐらいに姿を現した。
シンボルのシルエットが浮き上がると、眞門は星斗の顔に両手を伸ばし、行為を辞めさせた。
しかし、星斗はまだ足りない。
そんな瞳で眞門を見上げる。
「とってもお利口だよ。星斗は本当にお利口になったね」
こんな状況なのに―。
頭の片隅ではそう思うのに、褒められたことが星斗はとても嬉しい。
「いつもより上手だね」
「へ?」
「やっぱり、人に見られるのがそんなに好きなんだ?」
「・・・・・」
「そんな下品な顔を晒して、みっともない・・・」
「!」
星斗は眞門の異変に気づく。
「星斗はいつだってそうだ。そのイヤらしい顔をいつも誰かに見せたがる・・・」
これはまずいかもしれない。
星斗は経験からそう思った。
眞門のDom性の暴走が始まろうとしているかもしれない。
星斗は眞門の様子をじっと見守る。
「覚えているか? 星斗と最初に出会った夜のこと。星斗はコレが欲しいって何度も強請って俺を困らせたんだ。俺はあの夜の気持ちと何も変わらないよ・・・なのに、星斗はどうして俺だけのものになってくれないの・・・」
星斗は勘付く。
いつものやつだ。
眞門の暴走が始まる瞬間だ、とー。
「なんで、引き離されないといけないんだ・・・っ。
俺以外、他の誰かに触れさせたまるかっ。
誰にも触れさせないっ。
だから、首輪を付けたんだっ。
それのどこが悪い・・・っ、それの何が悪い・・・っ、星斗は俺のものだ、誰にも渡さない、誰にも奪わせない。
・・・イヤだ・・・絶対にイヤだっ、星斗は俺が独り占めするっ」
「知未さんっ」
眞門の暴走が始まる、そう感じた瞬間、星斗は慌てて名前を呼び掛けた。
「!」
間一髪。
眞門は、星斗の呼びかけに反応するように、パッと我に返ったような表情を取り戻した。
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