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共謀⑤
眞門は拘束していた星斗の両手首をすぐに解放してやると、胸の中に抱きしめた。
そして、「もう安心して良いよ」、その言葉の代わりに、星斗の頭を何度も優しく撫でてた。
しかし、星斗は少しも喜べずにいた。
目の前にあった危機が一旦無くなったにも拘らず、星斗の心の中で今、満たしているものは罪悪感しかなかった。
眞門をなんとしてでも守りたい、その一心で取ってしまった自分の言動は本当に正しいものだったのだろうか?
そんな問いが胸の中を覆いつくしている。
ご主人様にこんな優しく頭を撫でられているのに、ちっとも嬉しくないのは、正しくないと気づいているからだよな。
星斗はその問いにそう答えを出した。
眞門の胸の中で抱きしめられているのに、頭の中に浮かんでくるのは、部屋を飛び出していった明生の横顔だ。
明生が泣いてた。
あんな悲しい顔をしている明生を初めて見た。
ごめんな、明生。
明生は俺の為を思ってくれてのことなのに。
馬鹿な兄でごめん。
愚かな兄でごめん。
でも、俺はどうしても知未さんを守りたかったんだ。
俺はあんな優しい弟を何回傷つければ気が済むんだろう。
本当にごめん。
星斗は、眞門の胸に抱かれながら、明生への懺悔を心の中で永遠と述べていた。
と、何を思ったのか、眞門が突然、拓未に驚きの提案をする。
「あの、今から星斗とふたりきりにしてもらえませんか? そうだ、上の階 の調教部屋は空いてませんか?」
「!」
星斗は驚いて、眞門の顔をマジマジと見る。
何を言いだしてるの・・・?
俺たちは、とりあえず、Playすることから逃れたんだよっ。
眞門の突然の提案に、拓未も「は?」とした顔で、呆気にとられている。
「あそこなら、監視カメラがありますよね。父さんと明生クンにはカメラで監視してもらうことにして、部屋には星斗とふたりきりにしてもらえませんか?」
拓未は呆れた様子で、眞門をマジマジと見つめる。
「・・・お前、正気か? Playをまだ続けるつもりでいるのか?」
拓未は、ほとほと呆れたような物言いだ。
「ええ。だって、父さんと明生クンにはきちんと証明しないといけないでしょう。俺がSub drop症候群なんかに襲われていないって証拠」
眞門の物言いはやけに強気だった。
「!」
その物言いを聞いた瞬間、星斗は若干の恐怖に包まれた。
知未さんが怒ってる。
でも、どうして!?
・・・伝わってくる、繋がったリードから。
Dom性が暴走した時の、あの、怒った時の知未さんのオーラが俺の体に流れ込んでくる。
星斗は繋がれたリードから、眞門の邪な感情の気配を感じ取る。
「それはそうだが・・・星斗クンがこんな状態でPlayが続行できると思っているのか?」
「ええ。俺に任せてください。星斗のことは誰よりも俺が一番分かっていますから。どうしてもお仕置きしてやらないといけないので」
「・・・・・」
星斗は何も口にすることが出来なかった。
リードから伝わってくる、自分の主人からの恐怖の圧のせいか、それとも、今の眞門の状態を話せば、嘘の演技をしたことまでバレてしまう罪の意識からか。
どちらにしろ、自分は今、何かを口にすることは出来ない。
そう感じた。
拓未は、眞門の提案に困惑した様子をみせ、未だに返答に迷っているようだ。
腕を胸の前で組み、散々返答に悩んだ末、拓未は、最後は自分の直感に頼ろうとしたのか、眞門をじっと見つめた。
何かを確認するように、ただひたすら、じっと見つめる。
眞門はその視線から逃げることなく、拓未を見つめ返す。
そこから何かを感じ取ったのか、
「・・・良いだろう」
と、拓未は悩んだ挙句、承諾した。
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