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裏切り②

拓未が部屋を出て行き、室内は、星斗と眞門のふたりきりになった。 拓未がいなくなるや、眞門はドスンとベッドの上に腰を下ろす。 が、星斗はドアの近くに立ったまま、眞門とは距離を保っていた。 「何してるの? 早く側に来てよ」 眞門が不服そうに告げる。 が、 「・・・・・」 星斗は素直に従えなかった。 知未さんを助けるために、嘘の芝居までしてPlayを中止させたのに、どうして、監視された部屋で又、二人きりになることを選ぶのか? 信じられないっ! 何が俺にお仕置きするだっ! そもそも、今、目の前にいるのは、いつもの知未さんじゃない。 俺が助けたいと思った知未さんじゃないっ。 なのに、どうして、あの人の言うことを素直に従わなければならないのか。 星斗も不満で一杯だった。 「早く側に来てくれないと、父さんにおかしく思われるだろう? そうでなくても、何か疑ってるようなんだから」 眞門はイライラを募らせたように口にする。 しかし、星斗は反抗するようにプイッと顔を背けて、指示には従わない。 「仕方ないな・・・俺のSubはいつもわがままで困る」 眞門はそう愚痴ると、「Come(早く来なさいよ)」と、Commandで実力行使に出る。 Commandに逆らえない星斗は渋々、眞門の側に行く。 星斗が傍まで来ると、「Sit(ここに座って)」と、Commandを口にしながら、自分の股の間に座るように指示した。 星斗は命令に従って、眞門に背中を向ける格好で座った。 すると、すぐに眞門が後ろから抱き着く。 「なに、怒ってんの? 怒ってるのはこっちなんだけど」 「なんで、知未さんが怒るんですか?」 星斗は不服そうに訴える。 「裏切ったのはそっちでしょ!」 星斗はまだまだ文句が言い足りない、そんな顔だ。 「明生をあんなに傷つけてまで、Playを中止させたのに・・・俺は知未さんを助けたくて、なのに・・・」 「誰が助けてくれって言った?」 眞門が星斗の言葉を遮る。 部屋を移動する為に一旦、外していたリードを眞門が再び、星斗の首輪に繋げる。 「俺の胸の中で違う(Dom)のことを考えるなら、いっそ殺してくれた方がマシだった」 眞門が静かな怒りを込めて述べた。 「・・・・・」 星斗には眞門が何を言っているのか、全く思いつかない。 「・・・なんのことですか?」 星斗は当然のように聞く。 眞門は星斗の顎を持つと、自分の顔を見つめる様にクイっと星斗の首を捻った。 「俺と結婚するんじゃなかったの? だから、その首輪を付けてくれたんじゃないの?」 星斗は眞門の熱い視線にドキっとした。 なんだ、これ・・・。 俺、めちゃくちゃ腹立ててるはずなのに。 裏切られたって、心底腹を立ててるはずなのに。 知未さんからのDomのオーラが半端ない。 なんだ、これ・・・。 逆らいたくも逆らえない。 「星斗は一生、俺のモノになるって誓ったよね?」 「・・・・・」 ・・・どうしよう。 知未さんのDomの暴走が始まってる今、俺はそれを食い止めなきゃいけないのに。 なのに、吸い込まれる・・・。 抗えない。 なんだ、これ・・・。 俺・・・、俺・・・っ。 繋がれたリードから伝わるのか、眞門の圧倒的なDomの魅力に星斗は抗えなくなり、何も口に出来ない。 「俺より、弟が大事?」 「・・・・・」 やっぱり、そうか。 さっき、知未さんの胸の中で明生への懺悔を考えていたのがまずかったのか・・・。 でも、どうして? どうして、それが分かったんだろう・・・? 星斗はその理由を考える。 ・・・ひょっとして、リードで繋がっていたから? そんなことが分かるのか・・・? いや、でも、俺が知未さん以外の誰かを思っていたのは伝わったのかもしれない・・・。 「俺より、弟が好き?」 「・・・・・」 ・・・そっか。 俺が今、知未さんのDomのオーラにクラクラして何も出来ずにいるのは、リードで繋がれたせいか。 俺をお仕置きしたい。 俺を支配したい。 俺を絶対モノにする。 そんなDomのオーラが俺の中でどんどん溢れてきている。 そして、俺はそれにSub性が刺激されて抵抗できない。 「どうしたの? そんな苦しそうな顔して」 「・・・・・」 「きちんと俺の質問に答えて」 「・・・・・」 どうしよう。 この部屋には監視カメラがある。 俺達は監視されてる。 俺たちがやることは監視される。 なのに、なのに、我慢できない・・・。 俺は知未さんの暴走を止めなきゃいけいなのに・・・っ!! 「・・・好き」 「誰が?」 「知未さん」 「それだけ?」 「大好き」 「それで?」 「・・・欲しいです、今すぐ」 「誰を?」 「知未さん」 眞門はとても嬉しそうにニッコリと笑った。 「じゃあ、それ、証明させてもらうから」

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