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買い出しへ
ふたりとも慣れない夕食づくりに挑むため、正午を回ると、少し早い目の食材買い出しに出かけようという話になった。
そうと決まると、星斗は洗面所に篭もった。
洗面所にある大きな鏡の前で、何度も何度も自身のファッションチェックを重ねる。
眞門に贈られた首輪 を首から垂らすように装着すると、鏡に映して、首に巻きつく輪の大きさを幾度となく調整する。
最終的に、少し首元に余裕がある、まるで金のチェーンのネックレスのように見える形に決めると、ニンマリした。
「・・・うん、これで、シャツはやっぱり白!」
そう口にした星斗はシンプルな白いブラウスを着て、胸元を大胆に開け、わざと首輪 が目立つようにした。
「髪型はどうしようかな・・・前髪は下ろしたままか・・・それとも上げて額を出してカッコよく決めるか・・・」
そんなことを呟きながら、前髪を上げたり下げたりして、首輪 と照らし合わせながら、首輪 に似合うと思われる髪型を自分なりに探る。
「下げてる方がペット感が出て可愛いんだよなー。なら、髪の色を少し明るくしたいなー。その方がこの首輪 のゴールドのチェーンの部分とかなり合うと思うんだよなー。
知未さんに相談してみよう」
気がつけば、近くのスーパーに買い出しだけに行くだけで、30分以上も星斗は洗面所に篭もり続けていた。
さすがに業を煮やしたのか、「支度はまだ出来ないのー?」と、眞門から催促の声が聞こえてきた。
「もう少し待ってくださいーっ!」と、星斗はリビングにいるであろう眞門に向かって、叫んだ。
「・・・んー、やっぱり、可愛いSubに見られたいっ」
そう言うと、星斗は前髪を下ろす方を選択し、ようやく洗面所から出た。
※ ※
ふたりは、近くのスーパーに愛車で出かけた。
スーパーの駐車場に到着し、シートベルトを外し、車から降りようとした時、
「・・・あれ? 首輪 をしてきたんだ?」
と、眞門は星斗の首元にぶら下がる様に付けてある首輪 に気がついた。
「はい・・・」
星斗はどうして改めて聞かれたんだろう?と、不思議に思う。
大好きなDomに贈られたんだから、日常的に付けるのは当然のことじゃん。と、星斗は思う。
「・・・ひょっとして、外してきた方が良かったですか? 首輪を付けてる俺と一緒にいるのが恥ずかしいとか・・・?」
「なんでそんな考えになるんだよっ。だったら、最初から贈らないだろう?」
Normal育ちのせいで教養のなさが出てしまう星斗を眞門は明るく笑い飛ばす。
「前にしていた、期間限定の時にしてたピンクの首輪ね、あれ覚えてる?」
「はい」
「あれをしてる時も、ダーツバーやボウリング場、外でいるともずっと側にいただろう?」
「ああ、そうでした」
「てか、あれの方が恥ずかしかったよ。好きなSubに安価なものさせてるって、絶対、周りから笑われているだろうなって思って・・・。
星斗のことを大事に扱ってないって思われてるって」
そうだ。
知未さんは自分の性別、Dom性を全く隠す人じゃなかった。
じゃあ、なんで、聞かれたんだろう・・・?
星斗は改めて、なぜ聞かれたのか?と不思議に思い、質問しようとした矢先、眞門が先に口にする。
「ずっと首輪してるのって、意外と疲れるだろう。贈られたからって、俺に気を遣わなくても良いよ。俺と一緒に居る時は外しておいても」
星斗を気遣う眞門の顔はとても優しかった。
この人は本当にDomらしくない。
本当に優しいご主人様だ。
常に俺を何より大切に思ってくれている。
俺は本当にこの人が大好きだ。
辛いことが沢山あったけど、俺はこの人を選んで本当に良かった。
星斗は改めてそう思うと、眞門に惚れ直した。
「大好き」
星斗は溢れだす心の声を思わず伝える。
「どうしたの、急に?」
と、照れる眞門。
「というか、俺はずっと、ずっと、ずーっと、付けていたいんです。だって、これは俺が欲しくて、欲しくて、欲しくてたまらなかった物ですからっ」
「そっか。そう言ってくれてるなんて、すごく嬉しいな。ありがとう」
眞門はそう言うと、思わず手が伸びて、星斗の頭を愛らしく撫でた。
・・・と、眞門の撫でる手がピタッと止まる。
「・・・そっか」
「え?」
「ごめん」
「はい?」
「そうだよな」
「なんです?」
「全然、Playしてないもんな・・・」
「ん?」
「欲求不満になるよな・・・」
眞門は渋い顔をする。
「俺、Domなのに、すぐに気づいてあげれなくて・・・ごめん・・・」
「・・・何がですか?」
星斗は眞門が何に対して謝っているのか、さっぱり分からない。
「首輪 を贈ったの、俺も星斗が初めてだからさ。気づくの遅すぎだよな。そっか、そうだよな・・・それって、すごく嬉しいな・・・」
「あの・・・さっきからの独り言は何ですか?」
「じゃあ、少しだけしてみる?」
「?」
「少しだけなら、多分、大丈夫だと思うんだ。ほんの少しだけね」
「???」
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