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苦悩するふたり②
星斗はトイレに駆け込むと、洗面所(手洗い場)に来て、水を出す。
何が、ここで犯されたいだっ!!
あぶねえーーーーっっっ!!
もう少しでSubに飲まれるところだった・・・!!
星斗は、火照った体の熱をなんとか静めようと、冷水を顔に浴びせる。
Subの欲求に飲みこまれる前に席を立たなきゃと思って、首輪 を外したいって咄嗟に嘘を口にしたけど、知未さんは変な誤解してないかなー。
冷水を存分に顔に浴びせると、少し気分が落ち着いたのか、鏡に自分の顔を映す。
みんなの前で犯されたいって、ただの変態じゃないかっ!!
普通じゃなくなったのは良いけど、変態になるはダメだからな!
変態になるのだけは絶対にダメだっ!
なったら、知未さんに嫌われる。
知未さんは下品なSubが大嫌いなんだ。
だから、変態にだけはなるわけにはいかない。
絶対に。
だから、落ち着け。
落ち着け、俺っ!
星斗は鏡に映る自分に言い聞かす。
「・・・でも、どうするの!? Play禁止するって・・・」
軽いPlayでオナニーまで展開しちゃう俺が、欲求が溜まったら、Subの欲求なんかに簡単に飲まれて、いつか完全体な変態にならないか・・・?
星斗はようやくここに来て、自分の中に眠るSub性に初めて不安を抱き始めた。
※ ※
星斗がトイレに立ち、目の前から居なくなると、眞門は「ハァー」と、大きくうな垂れた。
やっぱり、怒ってんじゃんっ!
首輪 を外したいって、そう言うことだろうっ!
あれだけ欲しかった首輪 だから、ずっと付けていたいって言ってくれてたじゃん!
なのに、外したいって、そう言うことだろうっ!
「・・・めっちゃ嫌われたじゃん、俺・・・なら、きちんと怒ってくれてもいいのに・・・」
多分、俺の不安定な精神状態を見越して我慢してくれてるんだろうな。
俺を怒らせたらいけないと思って。
星斗は優しいからな。
眞門は星斗の本心を見誤っていた。
でも、傷ついて当たり前だよ。
「スケベ」とか「変態」だとか、あんな酷い言葉を言われたら当然だよ。
絶対、傷ついてるって。
星斗はNormal育ちだから。
あんな酷い言葉を言われたの初めてだろうし。
絶対、俺に引いてるって。
ああ、どうやって、許してもらうか。
・・・けど、あんな酷いことしたのに、Sub dropしなくて、大事にならなくて、本当に良かった。
眞門は今後のことを真剣に考える。
星斗に宣言したけど、本当に、Play禁止なんて出来るか?
今もギリギリだったぞ。
星斗に首輪を外したいって言われた瞬間、俺の中のDomが一気に燃え上がろうとした。
服を全部はぎ取って、このテーブルの上で犯しまくって、二度と言えないように躾けてやろうか!!って、俺の中にいる危険なDomが叫んだ。
星斗が席を立ってくれたから、なんとか抑えつけれたけど、本当にこんな状態が続いてて、Play禁止なんて出来るのか?
・・・けど、星斗のことを考えてやると禁止するしかないんだよ。
あんな酷いことをまたしてしまったら、今度こそ確実にSub dropする。
でもなー、Play不足で睡眠不足に陥ってたのが、昨日のPlayのお陰で一気に解消されたしなー。
だから、やっぱり、Playって必要なんだよなー。
しかも、禁止したことで、欲求が溜まって、いつか爆発するんじゃないか?
・・・けど、星斗のことを考えてやるとなー。
・・・って、絶対無理。
薄々分かってる。
だって、星斗と一緒に居たら、いじめたくなる。
好きだから、いじめたくてたまらない。
いじめたら、可愛くなるから、ついつい虐めたくなる。
Normal性で言うバニラじゃないんだからさ、そもそもイチャイチャなんかで足りるわけないんだよっ!
けどな、星斗を傷つけたら可哀相だし・・・。
「あー、もうっ、じゃあ、どうすればいいんだよ・・・っ」
眞門が堂々巡りの悩みに頭を抱えていると、
「あの、ここ、よろしいですか?」
と、男の渋い声が聞こえた。
眞門は声を掛けてきた男に視線をやる。
「! 青 さんっ!?」
眞門は男の顔を見て、すぐに男の名前を口にする。
男はニッコリと微笑んだ。
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