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またもや苦悩する眞門③

「いいか・・・」と、寺西が諭すように口を開く。 「ダイナミクス性者にとって、性風俗は生きていくためには必要で、性風俗通いなんてダイナミクス性を持つ者にとってはごく当然の話で、むしろ、性風俗に通っている方が健全なことなんだよっていくら説明したところで、Normal育ちにそれがすぐに理解出来ると思うか? なにより、一番問題なのは、父親が家族にずっと嘘をついて今まで生きてきたってことだ。 何十年も家族を裏切ってきたってことだぞ。 お前が全てを告白すると言うことは、それを全て明らかにしまうということになるんだぞ。 お前はその覚悟が出来ているのか? お前は星斗クンを失うだけで済む話かもしれないけど、星斗クンはお前も家族も全部失うことになるんだぞ。 そうでなくても星斗クンは無職なのに、これから誰を頼って生きていくって言うんだよ。 又、誰とも分からない、どこぞのDomを飼い主にするって言いだすぞ。 しかも、星斗クンはお前としかPlay出来ない心身なのにだ。 星斗クンの待つ未来はボロボロだぞ。 その引き金をお前が引くのか? 誰より大切で失いたくない人をお前は傷つけまくる覚悟で告白するんだろうな?」 「・・・なんで、お前は、いっつもいっつも、そんな意地悪な言い方しかしないんだよっ!」 そう言うと、眞門は今にも泣きそうな顔をする。 「お前って医者は、毎回毎回、Domを精神的に追い込ませたら世界一だな! 悪趣味名医っ!!」 打たれ弱い眞門は、寺西に追い込まれて訳が分からなくなり、思わず悪態をつく。 「俺はな、医者として、お前の精神状態も心配してんだよ。 星斗クンが不安定になったら、お前は確実におかしくなるだろうが。 今は星斗クンが側に居てくれるから、精神が安定して、お前は壊れずに済んでいるんだろうがっ」 「それは・・・うん・・・まあ、はい・・・そうです・・・」 医者としてのもっともな意見に反論の余地がない眞門。 「・・・仕方ない。ここはとりあえず、青さんの出方を伺うか・・・青さん、敵に回すと怖そうだしな・・・」 眞門は一旦、答えを保留にする。 「なんだよ、星斗クンの父親って、そんな手ごわい相手なのか?」 「だって、上流階級のDomSubが挙って通う性風俗店の幹部だぞ。 あの店は、政治家や有名人、政財界の大物だってお忍びで通うって噂の店だ。 多分、世間が驚くような秘密をたくさん握っていると思う。 本気でそいつらを脅せば、この国だって、自分たちの都合が良いように動かせると思うぞ。 しかも、青さん、今度、東側地域の支配人になるって噂だもんな―」 「それ、どれくらいの出世なの?」 「・・・うーん、上から数えて三番目くらい、かな」 「え、すごっ。 それは敵に回すと厄介だわ・・・。 お前、一応、セレブなんだから、世間にバレたら抹殺されるような秘密とか握られてないだろうな?」 「ないよ。そういうところは用心してるから。あー、でも、なんでまたこんな厄介事ばかり起きるんだろう・・・」 眞門は自分の人生を呪いたくなった。

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