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己を知りうる者は・・・

眞門から迎えに行けなくなったと連絡を受け取った星斗はヘアカットが終わると、電車を乗り継ぎ、ひとりで家に帰ってきた。 玄関のドアを開け、靴を脱ぎ、廊下に上がると、玄関から見て、すぐの右隣の壁に取り付けられてある大きな姿見の前で立ち止まる。 星斗は意気揚々と姿見に自分の姿を映す。 鏡に映る星斗の髪の色はハイトーンカラーの金髪に近い色で、緩めのパーマを全体的にかけたアンニュイな髪形に仕上げられている。 少し野暮ったかった星斗の印象が、かなり洗礼された姿へと変身している。 星斗は、首元にある、眞門から贈られた首輪(カラー)に、新しいヘアスタイルとなった自分の姿が負けていないことを確認すると、ニンマリした。 ・・・うん、これで、この首輪(カラー)に相応しいSubになれたって気がする。 髪の色を少し明るくし過ぎたかなと思ったけど、ヘアスタイリストのアドバイス通り、これぐらい明るくしないと釣り合ってないな。 後は、この髪形を知未さんが気に入ってくれるかだな。 かなり気に入った様子で鏡に映る自分のヘアスタイルを上機嫌で見ていると、星斗のスマホがメッセージの受信を知らせた。 相手は唯一のSubの友人、山本からだった。 『明日の夜、会える? お祝いしようよ』 山本に首輪(カラー)を贈られたことを報告をすると、山本は自分のことのように喜んでくれた。 そして、お祝いをしようと誘ってくれた。 眞門にさよならを告げられ、ひとりぼっちでいた期間、山本にはかなりの迷惑をかけたと自負しているので、山本には眞門から贈られた首輪(カラー)を是非とも見てもらいたかったし、なによりも誰でも良いので、自慢したい欲求に駆られて仕方ない星斗は是が非でも山本に見せたかった。 『知未さんに許可をもらいます』 星斗はそう返信した。 星斗は、首輪(カラー)を山本に明日見てもらえると思うと、また一段と気分が向上し、姿見に映る、首輪(カラー)をじっと見つめた。 首にぶら下がる様に、金色のチェーンが輝く。 思わず、右手が伸びて、チェーンに触れる。 手で触れ、その輝きを見ていると、不思議な気分に誘われる。 頭の中がフワフワとし、星斗の脳裏に最も興奮した出来事が蘇ってくる。 俺は知未さんのSub。 この首輪はその証。 その言葉共に、この前でのスーパーでの出来事が思い起こされる。 首輪にリードを繋がれて、スーパーの店内を歩いた。 初めて人前で受けた辱め。 リードで繋がれた星斗を見て、誰とも分からない通りすがりの客たちが星斗のことを嘲笑う様に浮かべる目。 羞恥と言うものを初めて知り、それが興奮そのものなのだと悟り、Subの悦びとして受け止めた。 俺は知未さんのSub。 いつもそう思っているけど、あの時、初めて、それを実感した。 それがどれほどの悦びなのか。 俺は知未さんのSub。 初めて、自分をそう認められた気になれて、心底嬉しかった。 星斗は鏡に映る首輪(カラー)を憑りつかれたようにじっと見つめる。 キラキラと輝く金色のチェーン。 この首輪(カラー)を贈られてから、俺はなんだかおかしくなっている。 その思いと共に星斗の顔はいつの間にか呆けていく。 もっと欲しいよ、知未さん。 もっと与えてよ、知未さん。 もっと、もっと。 もっと、俺のことを縛って。 もっと、俺の体に、知未さんのSubだっていう烙印を押して。 俺、全然足りない。 お願い、もっと、ちょうだい・・・っ。 俺のことなら、もっと虐めていいから。 と、星斗の脳裏に眞門の声が蘇ってくる。 『そんな時はどうすれば良かったんだっけ?』 ・・・おねだり。 星斗はそう答えを出すと、何を思ったのか、手が股間へと伸びていき、ズボンのフォックを外すと、下着と一緒に足首までずり下げた。 そして、上着を胸まで手繰り寄せて、鏡に自分の股間を映し出す。 もっと・・・もっとっ! もっと欲しい、知未さん・・・っ! 「知未さん、お願いです。ここにも付けてください。また、あの首輪(リング)を。俺のここに。俺のチンコにまた付けてください。ここにも欲しい。お願い・・・お願いだから、俺をもっと縛り付けて・・・っ、俺、知未さんのSubでずっといたい・・・」 Playをしていないせいで、欲求が溜まりに溜まっているのか、星斗はいつの間にかSubに飲みこまれ、星斗の中のSubの本能が暴れ出していた。 「欲しいよ、欲しいよ、知未さん・・・、欲しいよ、俺の体全てに。あそこにもここにも・・・来て・・・」 と、星斗の右手が股間に伸びた瞬間、『俺は下品なSubは嫌いだ!』、と、眞門の怒った顔と叱り飛ばす声が星斗の脳裏に響き渡る。 「!」 その言葉が響き渡った瞬間、星斗は瞬時に我に返る。 そして、姿見に向かって、股間を丸出しにした姿を見て、愕然とする。 何やってんだよ、俺・・・っ!! 星斗のペニスは大きく膨れ上がっていた。 星斗は慌ててズボンと下着を履き、ペニスをそのままで仕舞って、それ以上の行為を強制終了させる。 星斗は姿見に映る自分の顔を見て、怯える。 なにこれ・・・? 俺、今、何やろうとしてた・・・? なんで、急にこんな変態なことしてんの・・・? こんなの、ただの変態だろうっ。 嫌だっ・・・、絶対にイヤだっ!! 絶対に変態になんかなりたくない・・・っ! だって、知未さんに嫌われる・・・。 俺は知未さんのSubに生まれてきたんだっ。 変態に生まれてきたんじゃないっ!! 星斗が自分の中に眠るSub性に怯えていると、玄関のドアが開いた。

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