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己を知りうる者は・・・⑥
「いえ・・・なんでもありません」
眞門は焦って、すぐに火消しをした。
気を許して、言わなくても良い辛い、胸の内まで思わず吐き出してしまった。
何もなかったかのように否定したことで、拓未が気に留めないでいてくれる事を祈った。
「そうか・・・」
眞門が願った通り、拓未は受け流してくれた。
が、眞門がホッとしたのも束の間、
「ところで、誰に言われたんだ?」
と、拓未がふいをついてくる。
「え?」
「私が息子の結婚を許したなど信じられない、と。
誰に言われた?」
「それは・・・」
「それは聞き捨てならないだろう。私のことをよく知る人物がお前に言ったって事だろう? 一体、誰なんだ?」
「・・・・・」
良い誤魔化し方がすぐに思い浮かばなかった眞門の目が一瞬、泳いだ。
どんな言い訳をしようか、すぐに考えたが遅かった。
「Look 」
そのCommandと共に、拓未が右手の親指と中指を使って、パチンと音を鳴らす。
フィンガースナップと共にCommandを発動させると、マスターと呼ばれるDomはその他のDomに対し、Commandの能力が強制的に発動できてしまう。
拓未は瞳を黄金色に輝かせると、躊躇なくGlareを発動させる。
それは、マスターと呼ばれるDomだけ有する能力。
並のDomの眞門はマスターの強制的な力を使われて、嫌でも拓未に視線を合わせてしまう。
催眠にでも掛けられたのか、眞門はどこかぽわ~んとした、間の抜けた顔になる。
「良い子だよ、知未。それで、何を隠しているんだい?」
拓未はまるでSubを相手するかのように、眞門を手懐ける。
「誰に何を言われたんだ? Say 」
また、Commandと共にフィンガースナップで指を鳴らし、眞門に強制的に自白させる。
「青さんです」
眞門は呆けたままの顔で勝手に口走る。
「青さんとは?」
「星斗の父親です」
「星斗クンのお父さん!? ・・・それはまた興味深い。良い子だから、全てを正直に話しなさい。Say!」
と、Commandと共に拓未はフィンガースナップで指を鳴らし、眞門に対し、またCommand能力を発動させる。
拓未のマスターの能力にどうやっても逆らえない眞門は、青司の性別をはじめ、職業や地位、出会いに至るまで、そして、拓未がマスターだという事実を知られたことで青司から持ち掛けられた星斗についての取引内容までも、青司についての洗いざらいを自分の意志とは関係なく白状させられた。
眞門が全て自供し終わると、
「良い子だ、知未。全て正直に話してくれてありがとう。星斗クンの父親のことは全て私に任せておきなさい。これはマスターの仕事だ。性悪のSwitchのお仕置きをするのは私の役目だからね。久しぶりに楽しめそうな相手が現れたよ」
と、拓未はワクワクした顔で告げた。
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