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山本さんはやっぱり良きSubの友人②
「いいか、俺たちは、唯一、性に素直に生きて良いって許されてる人種だぞ。しかも、甘えたい放題にやりたい放題しても、叱って面倒を見てくれるDomっていう人種まで存在してくれているんだ。変態なのに、その相手に必要としてもらえる存在。最高じゃないか」
「・・・・・」
「それでNormal共が俺たちのことを変態呼ばわりするなら、いくらでも変態呼ばわりしてくれて構わない。だって、その言葉は俺たちにとってはただのカンフル剤だからっ」
そう言うと、どこまでが冗談なのか、山本はガハハハハっと大きく笑った。
しかし、星斗は同じようには笑えなかった。
むしろ、感心していた。
物凄く前向きな考え方だ。
そうだ、この前のPlayを経験して、俺もこんな風に生まれ変わったはずじゃないか。
なのに、いつの間にか、俺はまた普通に憧れてる。
「それを言うならさ、Domが一番可哀相だと思うな」
山本は焼けた肉を口の中に運び、咀嚼すると、飲みこんで言葉を続けた。
「だってさ、人を支配してしか満たされない人生って、大変だと思うんだよ。
俺たちは何かに甘えたり縋ったりしていればある程度は満たされて生きていくことが出来るけどさ、Domはさ、必要とされてないと生きていけないって人種なんだぞ。
それがどれだけ辛いことか分かるか?
人に必要とされてないってことは、生きる居場所がないってことと同じなんだよ。
想像しただけでそれがどれほど寂しい人生か・・・」
「・・・・・」
「必要とされてないってさ、ひとりぼっちって感じが何倍にも膨れ上がるんだよな」
「・・・・・」
「だから、俺はね、DomがSubに首輪 を贈るんだろうなって思ってる。俺たち にどこにも行って欲しくないから」
山本の言葉を聞いて、前に寺西にも同じようなことを言われたと、星斗は思いだした。
それじゃあ、知未さんは俺を必要としてくれてるってことなんだよな・・・?
「あの・・・それって、どんな変態でも必要としてくれるってことですか?」
山本はおかしな顔をする。
「あのさ、さっきからずっと口にしている変態って・・・自分のことをそう思ってるってこと?」
「そうです」
星斗は素直に頷く。
「なら、心配はいらないよ。お前がどれほどの変態でも。だって、Domの一番の好物だから、変態Sub。お仕置きに躾、世話が焼けて仕方ないSub。Domにとったら、手がかかるほど可愛いってやつだよ。・・・なんだよ、パートナーになにか気に障ることでも言われたのか?」
「いや、そうじゃなくて・・・俺がイヤって言うか・・・その、俺の変態性を知られたくないって言うか・・・」
「あー、それは良くないぞ。結婚前にちゃんと見せておかないと。じゃないと、うまく甘えられないだろう」
「甘える、ですか?」
「ああ。今日はこの部位からこの辺りまで縄で縛って欲しいとか、ここをこれぐらいの痛さでつねって欲しいとか。こんな罰を与えて欲しいとかこんな辱めを受けたいとか。そういうの、ないの、お前?」
「・・・・・」
星斗はすぐに姿見の前で妄想した行為を思い出す。
「また、チンコに首輪を」・・・なんて言えないっ!!
星斗は「ある」とは、どうしても恥ずかしくて口に出来なかった。
山本は生ビールが入ったジョッキから一口飲むと、何かを思い出した、そんな顔をする。
「そうそう、俺が最近、仲を取り持ったカップルの結婚が決まったんだけどさ、そのSubの人がわざわざ俺にお礼を言いに来てくれて。その時にこんな話を聞かせてくれたんだよ」
そう切り出すと、山本は聞いた話を披露する。
「そのSubの人がDomのご両親に挨拶に行く日に、Domにオムツを履くように命じられたんだって。
そして、それと同時に今から小便を我慢しなさい、とも命じられて。
お陰で、Subは命令だから仕方なく朝からトイレに行くことをずっと我慢してたんだよ。
そしたらさ、緊張も手伝ってか、挨拶しているさなかに限界がきてしまって、仕方なく、Domの両親がいる目の前でオムツの中にお漏らしをしたんだって」
「え!?」
「ウケるだろう?」
山本は爆笑するが、星斗は明らかに不快な顔をする。
星斗の軽蔑するような態度が目に入っていないのか、山本は話を続行する。
「ありえない辱めの行為だよな。けど、そのSubが受けた屈辱はそれだけじゃ勿論、終わらない。
帰ってきたら、今度はDomにオムツの中を当然チェックされる。
漏らしていないかどうか、Domの言いつけがきちんと守れていたかどうか、そのチェックを受けるんだよ。
まさに鬼Domってやつだよ」
そう言うと、何がおかしいのか、山本はまた笑った。
「で、勿論、お漏らししたことがバレて、特別な日にとんでもない辱めを受けただけでは終わらず、鬼Domからのお仕置きも更に受けることになる。俺はこの話を聞かされた時、てっきりクレーム案件かな?って疑ったわけ。
さすがにそれはやり過ぎでしょう、鬼Domさんって思ったわけ。
けど、お礼を言われた」
「お礼ですか?」
「ああ、素敵なDomを紹介してくれてありがとうございましたって」
「なんでですか?」
「え、お前、結婚すんのにこの話に共感しないの!?」
「はい」
「いいか、このPlayで、このSubの人は生涯一の興奮を味わったんだよ。
だから、このDomと出会えたこと、結婚できることを心から喜んだんだって。
だから、ありがとうございますって俺に言いに来てくれたの。
俺、初めてだよ。この仕事してて、他の誰かを羨ましいって思ったの」
星斗は思った。
今の話のどこに羨む要素があるのだろう???と。
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