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懺悔と約束

夜遅くならない内に、山本と別れて、星斗は帰宅した。 眞門との拗れる原因をこれ以上作らないでおこうと思い、早く帰ることにした。 リビングに入って来ると、ソファに座り、テレビで映画を楽しんでいる眞門の姿があった。 星斗が帰ってくると、眞門はすぐにテレビを消し、「おかえり」と、どこか安心したような顔で迎え入れた。 星斗はじーっと眞門の顔を見つめる。 「・・・なに?」 眞門に不安が広がる。 「ちゃんと甘えておけ」と言われた、山本のアドバイスを星斗は思い出す。 星斗はゆっくりと近づくと、眞門に飛びつく。 「!」 何事かと眞門は驚く。 と、星斗からお酒の匂いがする。 「・・・あー、酔っぱらってるのか?」 「・・・知未さんが悪い」 「うん、ごめんね」 「・・・俺が変なおねだりしても嫌いにならないですか?」 「え?」 星斗は眞門を熱く見つめた。 「リードを付けられて、デートしてみたいっておねだりしたら怒らないですか?」 「・・・へ?」 眞門はキョトンとする。 「!」 星斗はその顔を見て、一瞬にして酔いが覚める。 やっぱり、知未さん、こういうの嫌いなんだ。 星斗はそう感じ取って、すぐに離れると、「ごめんなさいっ!」と、口にして、螺旋階段に向かう。 眞門は驚き、すぐに後を追うと、星斗を後ろから抱き着いて捕まえる。 「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ! 今のナシで!」と、逃げようとジタバタする星斗を、「待って・・・っ、待って! 違う、違うから、ナシにしないでっ!」と、眞門は必死でなだめる。 「嬉しいっ、嬉しいからっ!! 今のおねだりっ!」 眞門がそう言うと、星斗のジタバタが止まった。 「驚いたんだよ、星斗にそんなことを言ってもらうにはどうすれば良いかって、ずっと考えてたから。まさかこんな早くおねだりしてくれるとは思ってなかったから」 「へ・・・?」 眞門は後ろから抱きしめたまま、顔を合わさずに告げる。 「俺がそう仕向けたんだ。星斗に下品なおねだりさせないように。星斗が今まで口に出来なかったのは、全部、俺のせいなんだ。反省している。ごめん。だから、嬉しかった」 星斗には眞門に謝罪されてる言葉の意味が分からなかった。 「辛かったよな。酷いDomで。ごめんな」 「・・・・・」 しかし、悲壮な声から、眞門の懺悔のようなものは受け取れた。 「・・・ねえ、約束してくれない? 俺がどんな俺でも俺のことを嫌いにならないって」 「・・・・・」 「星斗にどんな酷いことをしたいと思っていても、それを知って俺を軽蔑しないって」 星斗は眞門も自分と同じようなことで悩んでいたのかと初めて知った。 「あの、顔を見て話していいですか?」 「ああ」 眞門が抱き着いていた体勢を解くと、星斗は振り向いて、眞門に視線合わせた。 「知未さんも約束してくれますか? 俺がどんな奴でも嫌いにならないって」 「当然だろう」 「どんな欲望に飲まれても軽蔑しないって」 「ああ。いつも可愛いよ」 当然のように言ってのける眞門の言葉を聞いて、山本が言っていることは全部本当なんだと、星斗は確信する。 山本に言われたことを信じ、自分がどれだけ変態たどバレても眞門は愛してくれるだろう。 星斗はそう安心し、眞門に抱き着き、胸に顔を埋める。 「昨日のPlayを拒否してすみませんでした」 「ううん。前から言ってるだろう、Playの責任はDomの俺にあるって。俺こそごめんね、嫌がることして」 星斗は胸の中で首を横に振った。 「・・・俺、怖かったんです。知未さんの前で俺じゃなくなっていく俺が・・・今も怖い」 「ああ、俺も同じだよ。星斗といるといつもすぐに自分を見失う」 眞門は星斗を胸から放すと、熱く見つめた。 「だから、約束して欲しいんだ。俺のことを嫌いにならないって。そしたら、もう怖くなくなると思う」 「俺も! 約束するから、俺にも約束して欲しい」 「ああ。勿論。安心して。星斗のことはどんなことでも知りたいから」 「本当に?」 「ああ」 眞門は優しく微笑む。 「・・・ねえ、星斗のことをいっぱい汚したいんだ、これから」 「えっ・・・」 「いい?」 「・・・はい」 眞門はまた微笑むと、星斗の額に軽く口づけをする。 そして、眞門は星斗を強く抱きしめる。 「どこにも行かせないからね」と、耳元で誓う様に囁く眞門。 それは青司には渡さない、そんな誓いを込めてだった。 優しい囁きのはずなのに、星斗の脳裏には、なぜか山本のあの言葉が甦ってくる。 『Domは鬼なんだから、絶対に捕まったらいけないの』 ・・・あれ? 知未さんに限って、鬼Domなんてことありませんよね・・・? 「・・・でも、俺、オムツPlayだけは絶対にイヤですからっ!」 「・・・何の話?」 (※次回から温泉旅館へ行く編が始まります。只今、制作中の為、更新が一時、中断します。すみません!)

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