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いざ、温泉旅館へ!⑥

「丈、短っ!」 眞門の願いを聞き入れて、スケスケの浴衣を着てみた星斗。 スケスケ浴衣の丈が尻が隠れるぐらいまでしかないことに驚く。 「うーん・・・」 星斗のスケスケの浴衣姿を見てから、眞門はなぜか腕を胸の前で組むと、難しい顔を浮かべたまま唸っている。 「これって、まるで・・・」 「うん、Normal性の男が行く大人のイヤらしいお店のお嬢みたいな衣装だね」 眞門はとても渋い顔を浮かべると、「てか、なんで、そんなダサい下着を履いてきたの!?」と、星斗に難癖をつける。 「えっ、普通のボクサーじゃないですか・・・!? 誰に見られたって大丈夫なやつを履いてきたんですよ、温泉に入るんですから・・・っ」 星斗は黒のボクサーパンツ一枚の格好で、スケスケ浴衣を羽織っていた。 眞門がさっきから難しい顔を浮かべて唸っているのは、星斗が履いてきた黒のボクサーパンツがどうやっても気に入らないらしい。 「・・・だって、みんなに笑われるよ。セクシーな恰好をしたSubがこんなダサい下着を履いてたら」 スケスケ浴衣の丈が短いためか、時折、ボクサーパンツが浴衣からはみ出しては見え隠れする。 「!」 星斗はイヤな予感がし、焦りまくる。 「待ってくださいっ! 今、なんて言いました?! 俺、この格好で館内をうろつくんですか!? 知未さんの前だけじゃないんですか!」 「だって、Subのくせに辱め受けなくてどうするの?」 「・・・・・」 「みんなに恥ずかしい姿を見られて興奮しているところを俺に見せてよ」 眞門がじっと熱く見つめる。 「・・・・・」 星斗は何も言えなくなる。 まただ。 また、この圧だ。 肌に纏わりついてくる。 いくら逆らっても、俺はこの圧に浸食されていくことが分かる。 抵抗すればするほど、酷い結果になる気がしてならない。 「・・・分かりました!」 星斗は苦手なDomの圧に負けて、仕方なく受け入れた。 「じゃあ、どうすれば・・・あっ!」 星斗は先程、ベテラン仲居が口にした、ふんどしという言葉を思い出す。 「じゃあ、ふんどしを借りますか? 本当は履きたくなんかないですけど・・・」 「ふんどしは星斗にはまだ無理だよ」 「どうして?」 「あれは、ハードなPlayがOKなSubだけが身に着けて良いものだから」 「! ・・・そんな決まりがあるんですか!?」 「ああ。こういう旅館でふんどしを着用するってことは、緊縛プレイができますってことなんだよ。ちなみに浴衣の白の帯はパートナーとしかPlayしたことがありませんってことを意味しているんだよ」 「え、経験人数まで晒されるんですか!?」 「だって、この旅館ではSubのプライバシーはあってないようなものだから」 「マジか・・・」 「素敵な辱めだろう?」 「いえ、全く」 「じゃあ、してみる?」 「何を?」 「旅の恥はかき捨てって言うだろう。だから、ふんどしつけて亀甲縛りで天井から逆さ吊り。してあげようか」 「!」 「今なら、まだ特別室に変更してもらえると思うんだ。特別室なら道具が全部揃ってあると思うんだよ」 特別客室の"特別"ってそういう意味だったんかいっ!! 星斗は改めて、普通客室で良かったと安堵した。 「いえ・・・っ」 「隠さなくてもいいよ。したいなら、してあげるよ。安心して。俺、きちんと習得してあるから。実習も優秀だったよ、縛り方の」 「いえ、本当にそこまでは・・・。まだ・・・自分が何者なのか、何をどうしたいのか、よく分かっていないので・・・」 「そう・・・。じゃあ、俺は売店に行ってくるよ」 「え、どうして?」 「星斗の下着を買ってくるよ」 「へ?」 「いい、俺が帰ってくるまで部屋で大人しく待っててよ。くれぐれも、そんな格好で、ひとりでうろついたりしたら、お仕置きだからね!」 眞門はそう言い残すと、部屋を急いで飛び出して行った。 「稀に見る軽快な足取り・・・」 部屋を飛び出して行った眞門の後姿を見て、思わずそう洩らす星斗。 「・・・てか、こんな格好でうろつくなんて、ハードル高すぎるだろうっ!」 眞門が居なくなったことが分かると、星斗は思わず不満を口にした。

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