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食事処へ
夕食の時刻が迫ってきたので、星斗と眞門は桃の間を出て食事処へと向かった。
眞門に手を繋がれる星斗。
今度こそ、スケスケの浴衣を着た姿を色んな人の前で晒すんだ。
そう思うと、星斗は恥じらうしかない。
「どうかした?」
「やっぱり、恥ずかしいです・・・」
パイパンにされた上に履いた黒のレースのTバック。
その上に着たスケスケの浴衣。
全てご主人様からの命令でやったことだが、どれだけイヤらしい姿を晒して、人前で歩いているのかが自分でもよく分かっている。
こんなの、当たり前だけど人生で初の経験だ・・・。
まさか、自分の人生でこんなことが起きるなんて・・・絶対に誰にも想像できない!!
星斗はSubの興奮を味わうよりも恥ずかしさの方が上回っていた。
「素敵だよ」
眞門が隣で微笑む。
「えっ・・・」
「お利口なSubを連れてるって感じで嬉しい」
眞門が笑顔を見せた。
「!」
星斗の胸の奥でキュン!と、またもやトキメキを感じた音が聞こえてくる。
知未さんが喜んでくれている。
俺のご主人様が喜んでくれている。
星斗の中でSubの興奮が恥ずかしさよりも上回り始めた。
「本当ですか?」
「ああ」
「からかってないですか?」
「ううん。恥ずかしがりながらもご主人様の命令に従って頑張ってるんだなって伝わって、すごく健気で可愛い」
「・・・・・」
自身の下腹部がなぜか急に熱を持ち始めたことに星斗は気がついた。
これ以上熱くなってしまったら、こんな小さな下着じゃはみ出しちゃう・・・。
星斗は慌てて興奮を抑え込もうとするが、すればするほど、自分が本当はスケベなSubに思えてきてならない。
「・・・そう言えば、大浴場で一緒になったSubの女の子は紫の浴衣を着てたんですけど、紫を着たらダメなんですか?」
星斗は興奮を静める為に、何か他のことを考えてみようと気になっていたことを尋ねた。
「ああ。こういうところは、浴衣の色でどんなSubかひと目でわかる様にされてあるんだよ。ピンクはパートナーのDomとしかPlayしませんって意思表示。Domにも色が決まってて、俺が来ている緑もパートナーのSubとしかPlayしませんって意思表示。なので、俺たちの邪魔はしないでくださいってこと」
「じゃあ、紫は?」
「それ以外もOK」
「え?! じゃあ、紫を着た同士のカップルなら・・・」
「うん、そういうことだね。誘いがあればスワッピングのPlayもありってこと」
「じゃあ、あの子は俺よりも経験あるってことなのか・・・」
星斗はなぜか軽いショックを受けた。
そりゃ、男におっぱいを見られたぐらいじゃ何とも思わないか・・・。
ん・・・?
そうじゃないのか。
Sub同士だから見られても平気ってことか・・・?
あー、もう訳わかんないや!
「食事処に着いても驚かないでね。多分、星斗だけだと思う。ビンクの浴衣を着てるSub」
「マジですか!?」
「ずっと、このままで居てね」
「えっ・・・」
「俺だけのSubでいてね」
「・・・・」
星斗には、その眞門の言葉が、なぜか、とても切なく聞こえた。
こんな時こそ、俺が苦手なあのDomの圧を出してくればいいのに。
そしたら、俺は否応なく、「はい」って返すのに。
星斗はこんな時に限って、どうしてDomの圧で威嚇して来ないのだろう?と不思議に思った。
「・・・俺は居ますよ、ずっと。知未さんの側にずっと居ます。てか、居たいです」
星斗は握っていた手を強く握り返した。
「ありがとう」
眞門は微笑むと、星斗の額に軽く口づけする。
この宿に来てから、知未さんのスキンシップが激しい。
本当はこういう人なのかな・・・?
普段はこういうことをしたくても隠しているってことなのかな?
なら、俺はまだ知未さんのことを全然知らないんだな。
星斗はいつの間にか、恥ずかしいと思っていた自分の格好のことなど忘れ、優しい思いをきちんと伝えてくれる眞門 と寄り添って歩けることに、Subとしての幸せを感じていた。
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