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運命の出会い
艶々旅館の売店は到着と同時に案内されたラウンジの隣にあった。
観光旅館にならよくあるタイプの、誰でも気軽に立ち寄れるような開放的な雰囲気で造られている。
が、中に足を踏み入れてみて、観光旅館とはやはり違うんだと知り、星斗は驚いた。
所謂、お土産物と謳われている商品は隅の方にほんの少し置いてあるだけで、その他はDomSubカップル向けの商品しか置かれていないからだ。
パっと目にしただけでも、鞭に蝋燭に拘束具、そして大人のおもちゃなどが当たり前のように目に飛び込んでくる。
「Normal性者の男性が行くアダルトグッズのお店ってこんな雰囲気なんだろうか・・・」と、アダルトグッズ店に行った経験がない星斗は、そんなことを想像をしながら、初体験にドキドキして店内を見渡した。
「何かお探しですか?」
男の仲居が星斗に声を掛けてきた。
「!」
星斗はすぐにその男の仲居が、チェックインの時に挨拶をした、女将の次男、諒であることに気がついた。
諒の整った顔立ちを間近にし、少しドキマギとする。
「どうかされましたか?」
「いいえ」
「何をお探しですか?」
「・・・えーっと・・・その・・・下着を・・・探しに・・・」
星斗は照れながらそう伝えた。
「なら、こちらですよ」
と、諒に案内された下着売り場を見て、星斗は軽く絶句する。
「これ・・・全部メンズですか?」
「はい」
下着用のハンガーに掛けられた下着の数々。
どれもこれも生地の面積が少ない。
というより、星斗の目には、色とりどりの"紐"がハンガーに掛けられているようにしか映らない。
星斗はじっくりと観察してみるが、そのほとんどが今まで目にしたことのないような形状のもので、「どうやって履くんだろう?」と、選ぶよりもそちらの方に興味が湧いてしまった。
世の中って、広いんだな。
メンズにもあるんだ、見せる用の下着って・・・。
星斗は知らない世界がまだまだこの世にはあることをメンズの下着から悟った気分になった。
というか、ここから選んで履くなんて、ほとんど罰ゲームじゃないか・・・???
売られている下着を見ながら、その答えに行きついた星斗は、購入は諦めて、眞門が何と言うと、今夜は黒のボクサーパンツを履いてやると決めた。
「ありがとうございました」
星斗がそう告げて、売店を後にしようとした瞬間、
「どんなのをお探しですか!」
と、諒が引き留めるように、慌てて声を掛けてきた。
「いや・・・」
「パートナーの方はどんなものがお好みなんですか?」
「えっ・・・」
星斗は返答に詰まった。
そう言えば、俺、知未さんの好みとか全然知らないや。
この数ある中から、あのTバックを選んだってことは知未さんはTバックが好きってことなのかな?
てか、昨日、どんな気持ちでここから選んでたんだろう?
うわ・・・っ、なんか、知未さんのことが急にただの変態おやじに思えてきた・・・っ!?
え、なんか、ヤダ・・・っ。
うちのご主人様、意外に変態なんじゃないか!?
・・・でも、まあ、同じ男同士だから、そのへんの変態性に理解できちゃうんだよなー。
俺もNormal時代は見る側だったわけで、女子のTバックはむしろ嫌いじゃなかった。
てか、知未さんって、どんな下着が好みなんだろう・・・?
眞門の好みを知らないと悟った星斗は、下着についての知識を深めてみたいという気になった。
「これって・・・下着なんですか?」
ある形状の下着を手にとって、諒に尋ねる星斗。
「ジョックストラップタイプですよ」
「ジョック・・・ストラップ・・・?」と、聞いたことのない名前の下着に首を傾げてしまう星斗。
星斗が手に取った下着は、お尻のサイドに2本の紐があるだけで、その紐がウエストバンドと繋がっていて尻側を形成している。
星斗はその下着の前と後を何度か確認すると、「これ、どっちが前でどっちが後ろなんですか?」と、困った顔で質問した。
「プッ」と、諒は思わず吹き出す。
「キミ、そんなことも知らないの?」
「へ?」
「この下着はお尻を丸出しにして履く下着なんだよ」
「へえ~」と、妙に感心した様子を見せた星斗だったが、
だって、こんな下着を履いてる女性を見たことないもん・・・。
と、心の中では愚痴った。
「元々はスポーツ用に作られた男性用の下着なんだよ。動きやすさを求めてね。けど、形状がエッチだからね、そういう意図にも使われ出して」
「なるほど」
「キミ、Subでしょ? Subのくせに本当に知らないの?」
諒は可笑しさのあまり敬語を使うのを忘れたのか、砕けた物言いになってしまう。
「はい・・・。いけませんか?」
「いや、全然。ただ相当珍しいなって思って。今時、こんなことも知らないSubの子がいるんだって思って驚いた。ごめんね」
諒はとても爽やかな笑みを浮かべて謝った。
あ、笑った顔も可愛い♥
まさにキラースマイルだな。
この顔でどれだけの数をモノにしてきたんだろう?
そう考えると、イケメンって羨ましいよなー。
イケメンだからこそのなせる業か、歳も近いことから、星斗は諒に対し、警戒心が薄くなっていった。
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