273 / 311

運命の出会い②

「・・・てか、いつ履けば良いの? こんな実用的じゃない下着」 星斗はジョックストラップタイプの下着をマジマジと見て、諒にまた質問する。 すると、「プっ」と、また噴き出してしまう諒。 「いや、いつでも履きたいときに履けば良いでしょう、Subなんだから。ないの? めちゃくちゃに犯されたい時とか」 「えっ・・・」 「・・・あ、申し訳ありません!」 一瞬にして冷ややかな態度を見せた星斗を見るや否や、諒は急に態度を改めて、頭を下げた。 「お客様に下品な言葉を使ってしまって・・・配慮が欠けていました」 諒は頭を下げたまま恐縮する。 「あ、いいよ、全然気にしないで。変なことを聞いた俺が悪いんだから」 「そう言って頂けると助かります」 「だから、もうひとつ、変なことを聞いて良い?」 「はい」 「じゃあ、男のSubはみんな、こんなのを日常的に履いているってこと?」 「あー、いや、俺はDomなんで・・・そのへんの詳しいことは・・・」 「あ、そうなんだ、ごめんなさい・・・っ! 下着のことに詳しいからてっきりSubかと思ってしまって・・・。Dom特有の圧も感じなかったし。プライベートなことを告白させちゃって、こっちこそごめんなさい」 「いいえ、気になさらないでください。この旅館で働いている以上、隠すこともありませんから。ジョックストラップタイプの下着についてですけど、あくまでもDomの一般的な意見ならお教えできますよ」 「なに?」 「Domには人気はないです。この下着を履くようなSubは」 「え!?」 「やっぱり、はしたないじゃないですか。自ら犯されるのを待ってるって」 「なるほど・・・」 確かに、知未さんもそれをすごく嫌がるんだよな・・・。 でも、Domにとっての、セクシーとはしたないの違いってなんなの・・・? Tバックもジョックストラップもはしたなくない? Subからしたら、どっちもお尻丸出しにしてるんだから一緒じゃんっ。 その違いが分かんないんだよ・・・。 諒のアドバイスを聞き入れる形で、星斗はジョックストラップの下着を元にあった位置に戻した。 「でも、Subの男の子には人気がありますよ。みんな、履きたがります。やっぱり卑猥な気持ちを味わえるからじゃないですか。男の子の一番の弱点である尻を丸出しにしてるって・・・。M気が刺激されるんじゃないですか」 「そうなのかな・・・」 星斗は反するように全く興味を示さなかった。 「お客様は刺激されないんですか?」 「え?」 「確か、パートナーは眞門さんでしたよね?」 「あ、はい・・・」 挨拶の時にしか顔を合わせてないのに、俺のことまで覚えていたんだ。 諒の魂胆を知らない星斗は、諒の接客に対する意識の高さに感心した。 「なら、やっぱりTバックじゃないですか?」 「ええーっ、なんで分かるんですか!? やっぱり、Domの男性はTバックが好きなんですか?!」 「いや・・・そういうわけではないですけど・・・Domって定番が好きなんですよ。ちなみに、Domの女性に一番人気なのは、ダサめのキャラクターが描かれたトランクスとか白のブリーフなんですよ。そういうダサめのをわざと履かせて辱めを受けさせるのが好きな女性のDomの方って割と多いんですよ」 「へぇー、男と女のDomでそんな違いがあるのか・・・勉強になるな・・・てか、どっちの下着を履くのも普通にイヤだわ、俺」 履いた自身の姿を想像したのか、嫌悪した顔を浮かべて、星斗は次の下着の商品を手に取る。 「これもジョックストラップ・・・ん? じゃないのか・・・!?」 「それはフルオープンショーツです」 今度は尻側に生地があり、前側に穴が開いているビキニタイプの下着だ。 「お相手がやきもち焼きの方なら、これはお止めになられた方が無難ですよ。こんなの履いてるのがバレたら、お仕置き間違いなしです」 「え!?」 「誰に見せる為にこんなはしたないのを履いてるんだって叱られます。てか、俺なら確実に叱ります」 「そうなんだ・・・。なんか、下着ひとつ買うのも色々と難しいんですね・・・」 星斗は完全に下着に選びに興味を失ってしまう。 すごく面倒臭いっ! ボクサーパンツが正義じゃんっ。 ダサくても、やっぱり、普通が一番じゃんっ。 星斗の心にある、『普通でありたい』と思う欲求はSubにとっての刺激的な下着を見ても消えることはなかった。

ともだちにシェアしよう!