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運命の出会い③

「それで、お客様はどんな目的があって、下着を買いにいらっしゃったんですか?」 「えっ・・・」 「例えば、パートナーにお仕置きしてもらう為、とかですか?」 「・・・・・」 「それとも興奮してもらう為?」 「・・・・・」 星斗は呆気にとられた。 俺、そんなこと、今まで一度も考えたことなかった。 そうか、Playってそういうことなのか。 駆け引きなんだ。 下着ひとつにそんな駆け引きを考えなきゃいけなんだ。 じゃあ、知未さんが俺にTバックを履かせたのも何か駆け引きがあってのことだったのかな・・・? 俺、知未さんの狙い通りにリアクション出来ていたのかな・・・? そうじゃないとすると、知未さんにとても申し訳なく思う。 変態オヤジって軽蔑したことを反省しなきゃ。 こんな何にも知らないSubを相手にするのって、本当につまらないと思う。 普通が良いって思ってしまうSubを相手にするなんて、つまらないだけだと思う。 「・・・あのさ、参考までに教えてくれると嬉しいんだけど」と、星斗。 「なんでしょう?」 「キミはどんなのがいいの?」 「え?」 「キミは、パートナーのSubにはどんな下着を履いてもらえると嬉しい?」 諒はフッと軽く笑うと、「それ・・・誘われてる?」と、意味ありげな視線を投げて、返答してきた。 「へ!?」 そんなつもりがなかった星斗はとても驚く。 「退屈してるんだ?」 「え!?」 「いいよ、相手してあげて。キミ、可愛いし」 「いや・・・っ」 「それに、すごく調教のしがいがありそうだし・・・」 「・・・いや、そこだけは充分に間に合ってるんで!」 「なーんて、冗談だよ。首輪をしているSubに手を出すのはルール違反だからね。でも・・・」 諒は星斗の耳元に自分の顔をそっと寄せると、「こんな首輪がなかったら、完全に眞門さんから奪いに行ってる」と、囁いた。 「!」 星斗が驚いた顔を見せると、諒はフフンっと悪戯ぽく微笑んで見せた。 星斗は少し不愉快な顔を見せた。 なんで、DomってSubをからかうことしかしないんだよっ!と、心で愚痴る。 「それで、さっきの質問の答えだけど・・・」と、諒は何事もなかったかのように話しを進めると、「あれかなー、俺は・・・」と、別の棚に飾られてある、丈の短い白いエプロンを指さす。 「裸エプロン。やっぱり、Domにとっての大好物」と、告げる。 「え!? Domは裸エプロンさせるのが好きなの・・・?」 「ああ。これに限っては、男のDomも女のDomも大好きだよ。裸エプロンで自分にご奉仕させるPlayはDomがやってみたい憧れのPlayのひとつだよ」 諒は星斗を熱く見つめる。 「だから見せてよ。キミの裸エプロンの姿」 「!」 星斗はドキっとする。 やばい・・・っ! なんだ、急に来た彼のこのDomの圧は。 流される・・・っ! 知未さんとまた違った、若さのせいか、エロさだけしか詰まってないのが分かる! 「そんな私服なんかでがっちり身を固めてないでさ、裸エプロンで館内をうろつけば? うちでは、セクシーな格好をしてくれるSubは大歓迎なんだよ」 「いや、でも・・・」 「なんなら、俺が今すぐ着替えさせてあげてようか」 「はい!?」 あ、また来るっ! ヤバい、ヤバい、ヤバいっ! 俺の胸がキュンキュン鳴ってる!! このDomのどエロい調教を一度受けてみたいってキュンキュンするっ! なんだよこれ・・・??? 俺、こんなに浮気性だったっけ・・・? てか、Domに言い寄られたら、俺は誰にでも一度はトキメかないか!? 弟の明生にさえ、トキメいた時もあるし・・・。 これが噂のSubの浮気性ってやつなんだろうか・・・? イケメンの諒に見つめられ、エロスの誘惑と格闘する星斗。 諒の視線をなんとか振り切ろうとしたところ、諒の背後にある棚に置かれた【とある商品】に目を奪われてしまう。 「えっ・・・」と、その商品を見た瞬間、感嘆の声を洩らしてしまった星斗。 「どうしたの?」 「これなに・・・?」 星斗は吸い寄せられるように、諒を押しのけて、その商品の元へと近づく。 それは、ベルトが少し太めの黒のエナメル革の首輪。 これと言って述べることもない、至って普通の首輪だ。 諒に誘惑されトキメいていたことなど既にどうでも良くなったのか、諒のことなどそっちのけで、星斗はその何の変哲もない首輪に心を奪われ、かぶりつくように魅入られてしまう。

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