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運命の出会い④

「ただの首輪だけど」 「これです、これっ!! これはなんですか?」 星斗はその首輪にストラップで付けられた、小さな紙の札が入ったプレートを指さす。 「ああ。ネームプレートみたいなものって言えばいいのかな」 「ネームプレート?」 「ほら、入場証明とか身分証明とかで使用されるネームプレートがあるだろう。あれを小さくして首輪に付けてあるんだよ。知ってるかな? 犬とか猫とかの迷子札。あれがネームプレートになったって考えればいいんだよ」 「へえー。いいなー。これ欲しいな・・・こんなのがあるんだ・・・」 「いや、でも、それお仕置き用の首輪だよ」 「へ?」 「そのネームプレートはお仕置き用として使われるんだよ。ネームプレートに何を書き込むかはパートナーのDom次第だけど、例えば、屈辱的な言葉を書かれて、それを首輪にぶら下げることによって、Domからの罰を受けることになるんだ」 「へえー、それでもいいなー」 そのお仕置き用の首輪に、星斗があまりにも夢中で見入っているので、諒は棚からその首輪を取ってやって間近で見せてやる。 「リードをつける金具は首輪の真後ろに作られてあって、ネームプレートの部分が真正面に来る作りなんだ。だから、それをみんなに見られることで辱めを受けるって仕組みの首輪だよ」 「へえー、やっぱりいいなー、これ欲しい・・・」 星斗はそう言いながら、お仕置き用の黒のエナメル革の首輪にまだ魅入られている。 と、「・・・あっ! ヤバいっ!」と、何かを感じとって、突然声を上げた星斗。 「どうしたの?」 「怒ってる・・・久々に怒ってる・・・」 「へ?」 諒が詳しいことを聞く暇もなく、「星斗」と、ふたりの背後から眞門の声が飛んでくる。 仏頂面を隠すことなく、眞門が売店の出入り口にいる。 星斗は眞門の怒りの気配が近づいてきたことを誰よりも早くに気づいていた。 「何してんの?」 素っ気ない眞門のその言葉には、いろんなものが含まれていることを星斗は瞬時に悟る。 「部屋になかなか戻ってこないから心配して探しに来たんだけど」 眞門のふくれっ面を見て、星斗はいつものように焦った。 マズイな。 Dom性暴走寸前の知未さんの顔になってる。 めちゃくちゃ怒ってる。 どうにかなる前になんとか鎮めなきゃ・・・。 「知未さん」 星斗は甘えるような声で呼びかける。 「なに?」 星斗を見下すような、どこか素っ気ない態度で返答する眞門。 「あれを買ってもらえませんか?」 諒からお仕置き用だと説明を受けた黒のエナメル革の首輪を指さす。 「どうして? 今ので可愛いじゃない? てか、今ので充分に満足して喜んでたじゃない?」 「はい。これはこれで嬉しいんです。けど、あれがどうしても欲しいんです」 「あの仲居に何言われたの?」 「え?」 「分かってんの? あれ、お仕置き用だよ」 「はい」 「それは自己申告したってことでいいの?」 「えっ!?」 「あいつと今から浮気しようとしてたんでしょ?」 「そんなっ!」 「いいよ、買ってあげる。自己申告したってことのご褒美で」 「!」 星斗は眞門が勘違いをしていることに焦る。 「待ってくださいっ! 俺は知未さんが思ってるようなことはしてませんよ! 俺がするわけないでしょっ! 俺はあれを・・・」 「Shut Up(うるさい)!」 「・・・・・」 星斗はCommandに反応して、すぐに口を閉じる。 眞門は諒の前に行くと、「その首輪、いただけますか。うちのSubに今からお仕置きをしなきゃいけなくなったんで」と、告げる。 「かしこまりました」 「後、これ以上、俺のSubに何かしようとしたら、女将さんに遠慮なく告げ口させてもらいますから」 眞門特有の陰険な言葉で諒をけん制すると、星斗の手を引いて、さっさと部屋に連れ戻った。

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