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運命の出会い⑤
桃の間に連れ戻されるなり、星斗は眞門に畳の上に押し倒される。
「どういうつもり?」
「・・・・・」
眞門の怒った顔を見つめると、星斗はなぜかホッと安心した。
Dom性暴走寸前の知未さんだ。
このDomの圧が愛しい。
誰が何と言おうと、俺は好きだ、この知未さん。
だって、俺はこのDomの圧の言いなりになれば良い。
自分の恥を自らさらけ出さなくても良い。
この人 が俺の恥を全てさらけ出させてくれる。
俺はこの人が望むSubになれば良い。
俺をSubに変身させてくれる。
俺は自らSubを目指さなくて良い。
「どうして、何にも言わないの?」
「あなたのことが大好きです」
「は? 誰もそんなことを今は聞いてないだろう? それで全て誤魔化そうとしてるつもり?」
「はい」
「へ?」
星斗は眞門を更に怒らそうと企てる。
「だから、もっと叱ってください」
「・・・・・」
「もっと怒ってください」
「・・・・・」
「俺のことを好きにしていいですから。知未さんの好きにしてくれて良いですから。知未さんの色に染めてください。あなたのことが大好きだから」
「・・・・・」
眞門は起き上ると胡坐をかいた。
そして、落ち着きを取り戻した顔つきに変わると、
「・・・ごめん。Domに飲まれてたな・・・」
と、冷静さも取り戻していた。
そんな・・・っ!
なんで、ここで暴走が止まるの!!
今までではありえなかった眞門の言動を、星斗はどうしてか素直に喜べず、むしろ残念がった。
自分の期待したことはもう起こらない。
それが分かると、星斗も起き上がった。
と、眞門がグイっと顔をいきなり近づけてきた。
「で、売店で何してたの?」
動揺する星斗を尻目に冷静さを取り戻した眞門が何かを見透かすようにじっと見つめてくる。
来た・・・。
俺の苦手なDomの圧だ・・・。
まとわりついてくる。
俺がSubだと認識させられる。
俺が自分の感情を素直にさらけ出すまで、諦めずに追い込んでくる。
「・・・下着を買いに・・・」
「下着? 俺の好みが気に入らなかった?」
「そういうわけじゃなくて・・・」
「じゃあ、もっとエッチな下着を履きたかったの? サプライズしてくれるつもりだった?」
「そういうわけでもなくて・・・」
「今、下着は?」
「えっ・・・。履いてません」
「気に入るような物は売ってなかったの?」
「・・・はい」
「そう・・・」
眞門は、星斗が買って欲しいとせがんだ、お仕置き用の黒のエナメル革の首輪を取り出す。
「じゃあ、これが欲しいと思ったのはどうして?」
「・・・・・」
「お仕置きされてでも欲しいと思ったんでしょ?」
「・・・・・」
答えない星斗に、業を煮やす眞門。
「素直に答えないなら、Commandを使うよ」
どうせ答えることになるなら・・・。
そう思い、素直に答えることにした星斗。
「・・・ネームプレートが・・・羨ましくて・・・」
「ネームプレート?」
「付けたかったんです」
「ネームプレートを?」
「はい」
「どんな?」
「【知未さんのSub】」
「俺のSubだって書いたネームプレートを付けたいの?」
「はい・・・」
「そんなに俺に支配されてたいの?」
「・・・はい」
「そうか・・・。分かった。じゃあ、浮気なんか一ミリも考えていないって言葉は信じてあげるよ。でも、なんで、さっき星斗は俺を勘違いさせるようなことを言ったりしたの?」
「それは・・・」
星斗はそこは嘘をついた。
「素直に受け入れた方がDom性の暴走が大きくならずに済むかなって・・・」
普通でありたいから。
自分の力でSubにはなりたくないから。
知未さんに変えて欲しいから。
それらは眞門に知られてはいけない。
なぜかそう思って、嘘をついた。
「そう・・・じゃあ、素直に答えてくれたご褒美をあげる。怖い思いもさせたことだし」
「!」
「星斗の望みを叶えてあげるよ」
星斗はパッと笑顔を見せる。
「本当ですかっ!」
「ああ。だからStrip 」
「え?」
「Strip 」
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