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星斗、拗ねる
「・・・ねえ、お願いだから、こっち向いてよ」
Playを終えて迎えたアフターケアの時間。
畳の上で寝転がり、左腕の腕枕に頭を乗せた星斗は眞門に対し、ずっと背を向けていた。
「いつもみたいに可愛く胸の中に抱き着いてきてよ」
「・・・・・」
「ねえ、お願いだから、早くっ!」
「・・・・・」
「アフターケアはDom にとっても大事な時間なんだよっ」
「・・・だって」
「いつもみたいにしてくれないと、こっちだって辛くなってくるんだよ。星斗に甘えてもらうこの時間の為に、星斗のことを虐めてるところもあるだからさ。これじゃあ、何のために虐めたか分からなくなって虚しくなるだろう。こんなアフターケアじゃ、Dom dropするよ!」
「え、そんなことあるんですか?」
「・・・いや、ないけど」
心配した自分がバカみたいだ。
そんな表情をムッとした顔で見せつける星斗。
また、背を向ける。
「もう、ごめん。気の利かない冗談だった。ねえ、頼むから、意地悪しないで、俺の胸の中に来てよ」
「・・・・・」
「もうっ、可愛かったって何度も言ってるだろうっ!!」
「・・・・・」
「嘘じゃないって!! 年甲斐もなく、興奮してた俺の様子も伝わってたでしょ!! 星斗と10歳も離れてるんだよっ。しかも、昨日の夜にあんなにした挙句にだよ。なのに、まだあんな興奮してたの、星斗が可愛かったから以外ないでしょ?」
「・・・・・」
「もう、頼むよ・・・お願いだから、星斗のことを俺の胸の中で抱かせてください・・・」
眞門が半べそをかき始めた。
「・・・俺のことを絶対に変な目で見ないですか?」
「見るわけないじゃんっ。今までだって、そんな目で見たことないだろう?」
「軽蔑なしですよ」
「もう、しないって、早くっ!! ほら、おいで!」
星斗はクルッと素早く向きを変えると、すぐさま、眞門の胸に顔を埋めた。
「なにそれ・・・? 顔を見せてよ」
「やだ。変態だって目でみられたら傷つくもん」
「もうっ、いい加減にしなよっ! そんなこと一ミリも思ってないって、何度言えば、機嫌直してくれるの!?」
「・・・じゃあ、金輪際、さっきみたいなおねだりをさせないでください」
「それは・・・無理だよ・・・」
眞門はギュッと安心させるように星斗を強く抱きしめる。
「本当に可愛くて仕方ないんだもん。あんな困った顔を見せられたら、絶対無理だよ・・・約束はできないよ・・・」
「なんで! あれのどこか可愛いんですかーっ?! 俺、ただの変態野郎だったじゃないですか・・・」
眞門の胸の中で落ち込む星斗。
「いや、でも、あれが可愛いんだよ。あれが可愛くて可愛くて仕方ないの。止められないの。それがDomなの。不条理の塊で出来てるのがDomなの。だから、ごめんねとしか言えない」
「・・・じゃあ、本当に俺のことを嫌いになってませんか? 軽蔑してませんか? まだ、俺のことを好きでいてくれてますか?」
「当然だろう? 何馬鹿な事を思ってんの? なってたら、こんな必死になってアフターケアを求めたりしないって。だから、もう機嫌直して」
「・・・はい」
「じゃあ、可愛い顔を見せて」
星斗が怯えた顔で眞門を見つめる。
眞門は優しく微笑むと、星斗がの額に軽く口づけをしてやる。
「大好きだよ」
「ホントに?」
「ああ。このまま、ずっと俺だけのSubでいて欲しい」
星斗は安堵した顔を見せると、「はい」と、返事した。
「ところでさ、話が途中になってしまってたけど、星斗は何しに売店に行ってたの?」
「だから・・・下着を買いに・・・」
「何か履いてみたいのがあったの? もっとエッチなのを履いてみたかったの?」
「違いますっ! どうしてそういう発想になるんですか! もっと大人しいというか・・・控えめというか、自分に似合ったものはないかと・・・」
「なんで? 黒のTバックは似合ってたよ。だから、また履いてもらおうと思って、同じバージョンで色違いの赤色を買ってきておいたのに・・・ほら」
と、眞門が指をさすと、浴衣盆で綺麗に畳まれてあるピンクのスケスケ浴衣の上に赤色のレースのTバッグが置かれてある。
「!」
「折角、こんな旅館に来たんだからさ、セクシーなのを履けばいいじゃない?」
「だ、か、ら! 俺にはそういうの似合わないと思うし、そもそも、あんまり気が乗らないんですよ・・・セクシー系を身に着けるのって・・・」
「そうか。残念。今夜の赤のTバック姿も楽しみにしてたのにな・・・」
その嘆きを聞いた星斗は思った。
あら、うちのご主人様はただの変態エロオヤジだったみたい・・・。
Playの駆け引きとか全く関係なかったみたい。
ただの個人的趣味で下着を選んでたみたい。
ご主人様が変態おやじだったと分かり、軽いショックを受ける星斗。
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