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今夜の手ほどき
「じゃあ、売店に気に入ったものは売ってなかったの?」
「はい」
「そうか・・・気に入る下着がなかったか・・・履いてみたい下着がなかったんなら仕方ないな・・・じゃあ、この後は履かないままで過ごすんだよね?」
「え・・・?」
「だって、履きたくないんでしょ? 下着は」
「いや、誰もそんなこと言ってないじゃないですかっ。てか、昨日から、人の話をちゃんと聞いて理解してくださいよっ! 俺はセクシーな下着を履きたくないって言っているだけです!」
「うん、だから、履かないんでしょ、下着は」
眞門からイヤなDomの圧を感じ始める星斗。
「・・・なんか、すっごいイヤな予感がしてきたんですけど・・・」
眞門はニタっとまた悪だくみを企んだように微笑んだ。
※ ※
「うん、これもヤバいくらい可愛いよ。すごく似合ってる」
星斗の姿を見て、眞門が興奮気味でニコニコしながらそう口にする。
星斗は全裸にメイド風のセクシーエプロンをひとつ身に着けた出で立ちでいた。
「本当にこれで食事処に行くんですか?」と、眞門とは対照的に冷めた目を浮かべる星斗。
「ああ。交代と言うことで、今夜は星斗が俺の給仕をしてよ」
眞門が瞳をキラキラと輝かせている。
「・・・・・」
あのイケメンDomの仲居さん(=諒)が言ってた通り、Domは本当に裸エプロンが好きなんだ。
知未さんが俺の姿でこんなうっとりした顔を見せてるの初めて見た。
あのイケメン仲居さんの話を聞いた時から、いつか、こんな日は来るんだろうなと予測してたけど、まさか、こんな最速でやって来ることまでは予測できなかった。
「嬉しいな。星斗がこの二日間で、ここまで一気にSub性を開花させてくれるなんて」
「・・・・・」
眞門はそう言うものの、星斗はまだ冷めたテンション。
どうしよう。
まさか、本当にこんな姿を人前で晒すの?
コスプレのPlayって、隠れてコソコソやるから楽しいもんなんじゃないの・・・???
それにしてもエプロンの丈はかなり短めに作られている。
星斗は丈の裾を両手で抑えながら、
「これ、少しでも捲れたら、俺の自慢じゃない息子が見えちゃいます」
と、恥ずかしそうに訴えた。
「じゃあ、見えないように頑張ろう。見せたら、お仕置きってことで」
「は!?」
「当然だろう。俺、そこになんて書いた? 【主人専用】だよ」
「!」
キュン!
星斗の胸の奥でなぜかトキメキの音が鳴った。
「はい。エプロンと一緒にこれも買ってきてあげたからね」
眞門は売店でエプロンと一緒に黒のエナメル革のリードも購入して来た。
眞門はそのリードを手に取ると、星斗が今装着してあるお仕置き用の黒のエナメル革の首輪の後ろにある金具にリードを取り付ける。
「!」
キュンキュン!
星斗の胸の中でまたトキメキの音が鳴り響く。
「裸エプロンに俺の名前入りネームプレートをぶら下げられて、リードまで装着されてるなんて・・・まるで俺の使用人になったみたいだね」
「!!!」
キュン、キュン、キュン!!
胸の中で鳴りやまないトキメキの音。
星斗は抑えようのないSub性の興奮に飲まれそうになった。
「ごめんね」
「えっ・・・」
「星斗は依存傾向が強いから、こういうのが本当は好きなんだったんだよね」
「・・・・・」
「反省してる。この前はそれをよく知らなくて、お仕置きしてしまったこと。下僕って言って興奮したことを叱ったこと。あの時はごめんね」
星斗を癒すように、星斗の頭を優しく撫でてやる眞門。
「今度からは時々、こういうPlayをしてあげるからね」
「・・・・・」
「俺の使用人って扱い」
「・・・・・」
「俺の言うことを絶対的に聞かなきゃいけないっていう僕 的な扱い」
「・・・・・」
「イヤ?」
「いえ・・・」
とても嬉しいと悦びを感じたが、眞門には本性をまだ知られたくないというプライドが邪魔をして、素っ気ない返事をした。
「でも、股の辺りのエプロンの生地がさっきから盛り上がってるよ?」
「!」
星斗はエプロンの上からすぐに股間を押さえる。
「分かりやすくていいよ、男のSubは。嘘がつけない体をしてて・・・」
眞門は星斗を優しく抱きしめてやる。
「イヤなら、辞めてもいいからね」
「え?」
「俺は怒らないから。星斗の好きを選べ良い」
眞門は星斗を熱く見つめる。
「この可愛い格好で、今夜は俺に給仕してくれますか?」
「・・・・・」
・・・無理だ。
そんなの。
できない。
出来るわけないよ・・・っ。
恥ずかしいじゃないか。
人前でこんな格好を晒して、知未さんにご奉仕するなんて!
普通ならするわけないっ。
「・・・はい」
なのに、どうして、俺のSubの欲求は全然止まらないんだーーーっ!!
「ありがとう」
眞門はご褒美のように星斗の額に軽く口づけをした。
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