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メイドな星斗
食事処へやって来ると、今夜は諒がふたりを出迎えた。
「お待ちしておりました」
諒を見て、露骨にムッとする眞門。
【Tomomi´s Sub】のネームプレートをぶら下げる首輪を付けた裸エプロン姿の星斗を、諒は上から下へ舐め回すように見ると、「フフ・・・」と、小馬鹿にした笑みを浮かべた。
軽いせせら笑い。
馬鹿にされた。
そう感じるのに、星斗の中でそれが快感へと変わっていく。
笑われた。
こんなコスプレをしていること。
当然だ。
・・・でも、嬉しい。
ご主人様の命令になら、どれだけイヤがってたことも素直に従うのか。
そうバカにされたと思ったら、嬉しかった。
星斗は頬を赤く染めた。
「本日はどのお席をお選びになられますか? 和室も空いておりますが」と、諒。
「好きな方を選びなさい」
眞門が後ろから、星斗にそう指示を出す。
「・・・じゃあ、テーブル席で・・・」
星斗は伝えるのが恥ずかしいのか、小さな声で答える。
「その恥ずかしい姿をうちの仲居達に確実に見てもらえる方をお選びになられるんですね」と、ニコリとする諒。
「!」
星斗は図星だったのか、とても恥ずかしそうにして、下を向いた。
しかし、眞門は、「チッ・・・」と、面白くないとばかりに舌打ちすると、「それ、主人の俺が言うセリフだろうっ!」と、諒に向かって注意する。
「人の楽しみをわざと奪ったな」と、敵意むき出しで諒を睨み付ける眞門。
「これは失礼いたしました。あまりにも可愛いメイドさんなので虐めたくなったもので」
「!」
諒のその言葉は、星斗のSub性を大いに刺激したのか、星斗は照れたようにエプロンの下の裾をギュッと手で握った。
しかし、またもや、星斗の恥じらう気持ちをわざと煽った諒に、頭にきた眞門は、
「言われなくても知ってるからーーーっ!」
と、大人げなさ全開にして文句を付けた。
「いい加減にしないと、マジで女将に告げ口するぞ」
「これは申し訳ございません。以後、気をつけます」
諒は眞門に対し、深く頭を下げた。
まだ若い諒に対し、これ以上責めても大人げないと思ったのか、眞門は素直に引き下がった。
「それではご案内を・・・」
「結構です。俺たちだけで行きます。後、料理はデザートも含めて、全て運んでください。うちには可愛いメイドがいて俺の世話してくれますから。なので、金輪際、君の顔をこちらには見せないようにしてください」
「かしこまりました。お飲み物はど・・・」
「赤ワインで! うちの可愛いメイドにはアップルジュースをお願いしますっ」
一旦はおとなしく引き下がったものの、やはり、沸き起こってくる暴力的なDom性を抑えきられなかったのか、眞門は年甲斐もなくケンカ腰に諒に用件だけを伝えると、星斗の手を引いて、そそくさと、昨日に案内された同じテーブル席へと移動した。
ふたりがテーブル席につくと、早速、昨日の夕食時のように、今夜のコース料理の全ての皿が運ばれた。
眞門は主人らしく椅子に座ると、星斗はおとなしく隣に立ったままでいた。
星斗は冷製の茶碗蒸しをスプーンで掬うと、「ご主人様、口を大きく開けてください」と、眞門に告げる。
「はい、あーんして下さい」
「あーん」
眞門が指示通りに口を開けると、星斗がスプーンで掬った茶碗蒸しを眞門の口内へゆっくりと運ぶ。
「美味しいですか?」
「ああ」
ふたりきりの世界になって、機嫌が戻ったのか、眞門は柔らかい笑みを浮かべた。
「エッチな格好をしたメイドに食べさせてもらってるから、すごく美味しい」
「!」
星斗の胸の中でキュンっ!と、まさかのトキメキの音が鳴る。
まさか・・・自分がこんな変態コスプレPlayに興奮するだなんて思いもしなかった。
Normalで育った時は、「こんなことするの変態がやることだろう」って、バカにしてたのに・・・。
うちのご主人様が時代遅れのどスケベ変態おやじ的なセクハラまがい言葉を発したにもかかわらず、それを嫌悪するどころか、嬉しいってトキメくなんて。
・・・どうかしてる。
俺、本当にどうかしてる。
どうかしてるって分かってるのに、やめられない。
・・・俺、Subなんだ。
今まで生きてきた中で一番に興奮してるっ。
このまま、一生いても良いって思えるくらい、幸福を感じてるっ!
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