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新しい朝を迎えて

星斗はスイッチが入ったようにパッと目を覚ますと、自分が桃の間の布団の中で眠っていることに気がついた。 「・・・また、やってしまった」 自分が全裸で眠っていたことが分かると同時に、昨晩の自身の痴態も鮮明によみがえってくる。 しかし、なぜか、いつものように反省する気持ちが全く湧きあがってこない。 いつもなら、情けない失態をすぐに責めて、酷く落ち込むはずなのに。 なのに、今朝に限っては全くそんな気持ちに陥らない。 ・・・だって、仕方ないよ。 あれが本当の俺なんだもん。 開き直りにも近い、そんな感情が心の中をふわふわと漂っている。 星斗は隣を確認した。 いつもなら、確実に隣で眠っているはずの眞門の気配が全く感じられないからだ。 星斗はすぐさま起き上ると、眞門の姿を探した。 「えっ・・・」 眞門の姿はすぐに見つかった。 足元の畳の上で倒れ込んでいた。 眞門に何が起きたのか分からないが、布団まで後もう一歩というところで行き倒れたようにして眠り込んでいた。 品行方正がモットーの眞門にしては、珍しく行儀の悪い寝相姿に、眞門の身に何か良からぬことでも起こったのだろうか?と、心配になり、様子を見に行く。 そう言えば、男は射精しすぎると死ぬって言ってたっけ・・・? 昨晩に言われたその言葉を思い出して「まさか・・・?」と、最悪のことも考えたが、眞門は死んだように深い眠りに落ちているだけのようでひとまず安堵した。 星斗は朝食の時間を迎える前に、身支度を整えようと思い洗面所へと向かった。 「・・・えっ!?」 洗面所の鏡に映る自分の姿を見て、星斗は唖然とする。 ・・・ないっ! ないっ! ないっ!!! ネームプレートが付いた、あのエナメル革の黒の首輪がないっ!! 星斗は急いで後ろを向いて、鏡に自分の尻をなんとか映す。 「!」 ないっ! 【主人専用】の文字も消えてるっ! 星斗は前に向き直すと、左胸を鏡に映す。 ・・・ない。 星斗は下を向く。 アンダーヘアがあった跡地に書かれた文字も確認するが、綺麗に消されていた。 ない・・・。 前も後ろも全部消えてる・・・。 星斗は自分でも信じられないくらいに落胆した。 消された。 俺が眠った後に。 ・・・いや、正しくは消してくれた、だ。 だって、俺のご主人様は優しい人だから。 ・・・当然なんだ。 だって、あれはPlayの一環だったんだから、Playが終われば消滅しても当り前。 ・・・無理だっ。 すごい喪失感が襲ってくるっ! なんだ、これ。 イヤだ。 今すぐ、また書いて欲しい。 ・・・俺、そうじゃないと耐えられないっ! 星斗はすぐさま助けを求めようと、眞門に目をやった。 が、依然、眞門は死んだように眠り込んでいる。 星斗はその姿を見て、ふと分かった気がした。 そういうことか。 俺が気を失うようにして眠った後に、知未さんは俺の体を拭いて綺麗にしてくれてたんだ。 知未さんらしい。 それがDomの役割だって思ってるところがある人だから。 それで、体力を0にしてしまって、こんなところで眠りこけてしまったんだ。 眞門の身に起こったことを星斗は自分なりに解き明かしてみた。 そんな思いやりのある眞門を無理やり起こしてやるのは可哀相だと思うも、その半面、星斗の中では今まで経験したことの無い漠然とした不安に襲い掛かられていた。 イヤだ! 怖い! 寂しい! ひとりにしないで! 放っておかないで! そんな負の感情が俺の中にずっと襲ってくる。 俺、知未さんの支配物のままでいたい。 昨夜のまま。 昨晩のまま、ご主人様に繋がれていたい。 ・・・ダメだ。 このままじゃ、不安で不安でたまらなくなって、Sub dropみたいになりそう。 星斗は眠り込んでいる眞門を見つめた。 「・・・俺は知未さんのSubだ」 小さく声で口にすると、死んだように眠る眞門の横に行って、同じように寝転び、体を密着させた。 知未さんが目を覚ますまでの時間、こうやって我慢して、お利口にしておこう。 そしたら、褒めてくれるよね? 目を覚ました時、お利口だって褒めてくれるよね? そうだよ。 褒めてもらえるよ。 すごく嬉しいな・・・。 眠り込む眞門の体に自身の体を出来るだけ密着させながら、そんなことを考えていると、星斗の心の中から不安な気持ちが少しずつ消えていった。

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