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新しい朝を迎えて②
星斗が眞門に寄り添うようにしてから、一時間程度経過した後、眞門がゆっくりと目を覚ました。
「イタタ・・・」
慣れない畳の上で眠ってしまったせいか、体のあちこちに鈍い痛みが走った。
と、体に妙な重しを感じる。
「おはようございます」
真横で体を引っ付けるようにして寝転がる星斗の存在に気づく。
「おはよう・・・って、なにしてんの?」
体に感じた重しは星斗だったのかと、眞門はここで星斗が側に居たことに気がついた。
「寂しくて」
「え?」
「起きたら、めちゃくちゃ寂しくて。サブドロしそうになって、怖かった・・・っ」
星斗は眞門の胸に思わず抱き着く。
「!」
「ネームプレートが付いた首輪がなくなってて、書いてもらった文字も体から消えてて、それに気づいたら知未さんのぬくもりを失ってしまった気がして・・・そしたら、サブドロしそうになって」
「星斗・・・」
「だから、こうするしかなくて。知未さんの側に居て体をくっ付けてたら、なんとか落ち着きました」
「そっか」
「だから、褒めてください。知未さんが起きるまでこうやって我慢していた俺を褒めてください」
「星斗はお利口だよ」
眞門は星斗の願いを素直に聞き入れて、星斗の頭を優しく撫でながら褒めてやった。
眞門が褒めると、嬉しそうにぎゅーっと抱きついて笑顔を見せた星斗。
眞門はその様子を見て、自分が押し込めたSub性を星斗が徐々にではあるが、解放出来始めていることに気がついた。
「知未さん」
「ん?」
「タトゥーを入れていいですか。首に知未さんの名前を・・・っ、あっ!」
星斗は慌てた声を上げると、「・・・ごめんなさいっ」と、すぐに謝った。
眞門が何か言う前に、眞門からの怒りの圧をすぐに感じ取ったからだ。
従順なSubでいたい。
褒められたい。
それが自分の生きる全て。
素直にそう思えるようになった星斗は、眞門の怒ってる理由がどうであれ、すぐに謝ることが正しいことだと本能的に理解出来た。
「黙ってたけど、俺、ずっと根に持ってるから」
「え?」
「勝手にピアスの穴をあけてきたこと」
「・・・・・」
「どんな小さな傷でも、俺以外の奴が星斗の体に傷つけたの、許させなくて、ずっと根に持ってるから」
「・・・ごめんなさい」
「星斗の体を傷つけて良いのは俺だけ。分かった?」
「はい」
「そんなに体に俺の名前を書いて欲しいなら、俺にお願いすれば良いだろう。俺がいつでも好きなだけ書いてあげる。だから、良い子にしていなさい」
「はい」
星斗は反省したことを見せる様に、怯えながらも、眞門の胸にまた抱き着く。
「・・・俺、ずっとこの圧が苦手でした」
蓄積しないように心掛け、放出しているDomの欲求を星斗は気づいていたのだと、今更ながら知る眞門。
「見えないプレッシャーみたいなの。じわじわと纏わりついてきて、気づけば逃げ場を失くしてて。だから、自分をさらけ出さなきゃいけなくなる。ずっとそんな気がしていて、苦手でした。でも、今叱られてようやく分かりました」
星斗は眞門を愛おしさでいっぱいで見つめる。
「俺は恥ずかしいことを素直に晒して良いんだって。あの圧に包まれた瞬間、どんな恥ずかしいことを晒してもきちんとあなた好みに躾けてもらえるんだって。だから、俺は安心してこの圧の中で生きていけば良いんだって。これは愛してくれてるSubにしか与えてくれない圧なんだって」
「星斗・・・」
「あなたのSubになれて本当に幸せです」
「・・・やっと、そんな風に言ってくれるんだ」
「え?」
「俺のSubになれたって」
「はい。俺は知未さんのSubです。知未さんに相応しいSubにならなきゃとかもう考えない。俺はあなたの支配がないと生きていけない。だから、お利口になる。それだけです」
「ああ、それで良い」
眞門はご褒美を与えるように、星斗の額に軽く口づけをしてやった。
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