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温泉でのアフターケア

SubとDomの混浴が許された、混浴の大浴場の出入り口に、【只今、貸し切り中】の木札がぶら下がった。 混浴風呂は総ヒノキで作られた大きな内風呂の浴槽がひとつあるだけで、前面には透明のガラス。 その窓ガラスの向こうには、自慢の中庭のライトアップされた景色が広がっていた。 自宅の浴槽では真似できない、星斗と眞門が横に並ぶ格好で湯船に浸かって、ライトアップされた中庭の景色をぼんやりと眺めていた。 ぼんやりと寛ぐ二人だが、湯の中では眞門の右手と星斗の左手がしっかりと握り合っている。 「・・・今、気がついたんですけど、この窓ガラス、特殊な加工はされていませんよね? 至って普通のガラスに見えるんですけど・・・」と、星斗。 「うん、そうじゃない」 「じゃあ、ここから中庭が見えてるってことは、中庭に行けば、ここは常に丸見えの状況ってことになりません?」 「そうだろうね」 「それって、"貸し切り"って言います? 全部丸見えなのに?」 星斗の当り前の疑問に眞門は苦笑いを浮かべると、 「Normalの考えなら、そうなるよね、言わないよね。多分、邪魔者は入っちゃダメっていう意味での貸し切りなんだとは思うけど。仕方ないんだよ、誰かに見られるという行為は俺たちにとったら添え物のひとつになんだから」 と、言い終えると、今度は冷ややかに笑いを浮かべた。 「・・・俺、ここに来て、初めて気がついたんですけど、知未さんって、実はかなり変な人なんですね」 「え、どこが!?」 「俺から見て、あー、やっぱり、この人は俺より大人だよなーって頼りになる顔を見せる時もあれば、今みたいに素っ裸で部屋を飛び出したり、俺に変な衣装を着せるのに必死になってたり。子供みたいな顔も見せるから、俺、正直、ずっと戸惑ってます」 「あれ、ひょっとして嫌われた!? ごめんっ! でも、それはDomの特性だから許して!」 眞門は少し焦りながら、頭を下げる。 「仕方ないんだよ。Dom性が強くなると、どうしてもムキになると言うか、子供ぽくなるところがあってさ。だから、時々、そういうのが出てしまうんだと思う。今もPlayが終わったばっかりだから、やんちゃなことをしてもへっちゃらっていう気分になってて、何も考えずに行動してしまったんだと思う。もし、そういう面で気に入らないことがあっても、これからは大目に見てくれない?」 「いや、俺、全然怒ってませんよ。ただ、俺は知未さんという人をまだまだ知らないんだって。この旅でそれが分かったって感じているんです」 そして、実はまさかの鬼Domかもしれないことも・・・。 星斗はその言葉は胸の中に隠した。 「なら、俺もだよ。・・・俺も星斗のことを全然分かってない」 「えっ・・・」 「だから、もっと教えてくれたり、素直に見せてくれると嬉しいな。星斗の本当のところ」 「・・・・・」 「星斗って、本当はさ・・・」 眞門はそこまで言うと、次の言葉を飲み込んだ。 「・・・いや、やっぱりいいや。なんでもない。気にしないで」 「え、なんなんですかっ! 気になるじゃないですかっ!」 「あー、もう忘れた。忘れたから、全然気にしないで」 眞門はその先の言葉をそう誤魔化して、頑なに口にしようとしなかった。 「こういうアフターケアがやっぱりいいよね。なんだか、時間の流れがゆっくりに感じて癒しの時間って感じで。いつもはベッドで抱き合って、俺が反省して、謝ってるばかりだもんね」 「そんなことは・・・」 「うちでも真似してみようか。Playが終わった後に、たまに一緒にお風呂に入ろうよ」 「はい」 星斗は快く了承すると、眞門の右肩にもたれ掛かった。 眞門が優しく星斗を見つめる。 「いつもまでこうしていたいな」 「はい」 「このまま時が止まれば良いのにな」 「はい」 星斗にとって、Dom性の欲求のコントロールを失わなかった眞門とのアフターケアの時間は、なんだかとても不思議な感覚で今までとは違う幸福感に満たされていた。

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