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進むべき道⑤

その夜。 星斗が風呂に入りに行くと、リビングに残った眞門は拓未に電話をかけた。 「夜分にすみません。早く報告しておきたいと思いまして。・・・星斗とはずっと一緒にいることにしました」 眞門は自分の出した決断を拓未にそう伝えた。 「会社にもすぐに復帰します。それと、父さんの提案も有難く引き受けさせてもらいます。俺、星斗の為に治療法を見つけることにしました」 『そうか』 「反対しないんですか? 絶対に反対されると思ってました」 『多分、そうなるだろうと思ってたから』 「え?」 『星斗クンには、お前じゃなきゃいけない理由があって、お前にも星斗クンじゃなきゃいけない理由があるんだろう』 「さすが、マスターですね、なんでもお見通しなんですね・・・」と、眞門は苦笑した。 「俺、恥ずかしい話ですけど、自分では魅力的なDomだって、どこかに自負があったんです。父さんのお陰で経験だけは色々と積ませてもらってましたから。けど、星斗と出会ってからはポンコツ過ぎることに気がついて・・・自分でも呆れています。 星斗はそんな俺をよく理解してくれていて、それでも側に居たいって言ってくれました。星斗は俺にいつも居場所を与えてくれようとしてくれるんです。 それは俺が探していた希望でした。 俺にも星斗が必要なんです」 『そうか』 「それで、星斗のご両親に正式なご挨拶に行きたいと考えています。父さんもご一緒してもらえますか?」 『ああ、勿論。・・・ようやくだな。おめでとう』 「まだ、早いですよ。星斗のお母さんから許しをもらえるかどうか分かりませんから。けど、父さんにそう言ってもらってとても嬉しいです。ありがとうございます。じゃあ、また連絡します。おやすみなさい」 そう言って、眞門は穏やかな表情で通話を切った。 ※ ※ 「ああ、おやすみ」 通話相手の眞門に拓未がそう告げると、眞門との通話が終わった。 ソファに座る拓未の膝の上には、青司が頭を乗せて寛いでいる。 拓未が青司の頭を優しく撫でながら、 「ふたりは結婚する決断をしたそうだ」 と、告げた。 青司は不安な顔を浮かべると、起き上った。 そして、そのまま拓未を見つめる。 「・・・どうするつもりですか?」 「どうするもこうするも、そう決断を出したのだから、ふたりが末永く幸せにいくように見守ってやるつもりだよ」 「そうじゃなくて、私たちのことです」 青司がまた不安な顔を浮かべた。 イヤな予感が当たらないように祈っている、そんな顔だ。 「青司」 「はい」 「秘密は守れるか? 私たちの関係」 「はい」 「私たちはあいつらの前では新郎の父親同士。いいな?」 「はい」 「私達の関係は絶対に秘密だ。なんせ、私らの関係はNormalで言う"不倫"になるからな」 「!」 「それでも良いなら・・・っ」 拓未が全てを言い終える前に、青司は拓未に思わず抱き着く。 「私をこのまま、側に置いてくれるんですか?」 「ああ。仕方ない。こんなしをらしいSwitchは初めてだからな」 見つめ合うと、ふたりは口づけをする。 「いいな、絶対に秘密だぞ。バレたら大変なことになる。まさか新郎の父親同士がそういう関係なんて」 「はい。拓未様の言いつけは絶対に守ってみせます」

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