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両家の顔合わせ
数週間が過ぎて―。
ある日の昼下がり。
高級ランクのシティホテルにある和風レストランの畳敷きの個室に、渋谷家と眞門家の両家が顔をそろえた。
皆、正装姿で集い、渋谷家の面々、青司、加奈子、星斗が並んで座ると、テーブルを挟んだ向かい側には、眞門家の拓未と眞門が座った。
「本日は私どもが設けましたこの場に足を運んでいただき、誠にありがとうございます」
拓未と眞門が深々と頭を下げると、渋谷家の三人も揃って頭を下げた。
「本来ならば、知未が星斗さんをお預かりした時点で、ご両親にはそのご了承のご挨拶を父親でありますこの私が直接、お伺いに行かねばいけなかったのですが、何分、知未の体調に問題が生じておりまして、その目処が付くまでは、二人の仲を許す訳にはいきませんでしたので、ご両親へのご挨拶が本日まで伸びてしまいました。ご両親様にはご無礼のほどを謹んでお詫びいたします」
拓未と眞門が再び、頭を下げた。
「知未の体調もだいぶ良くなり、ふたりの意志が固い以上、私もいつまでも反対するわけにはいかず、近くで見守っていますと、応援してやりたいという思いにも変わりまして、星斗さんとの結婚を認めることにいたしました。
まだまだ未熟な息子には、星斗さんのような優しい方が側に居ていただくことが必要だということが分かりました。
お父様、お母様、勝手な言い分ではございますが、何卒、ふたりの結婚をお許ししては頂けないでしょうか」
また、拓未と眞門が頭を下げた。
と、一人だけ、気に入らないとばかりにムスっとした顔を浮かべている加奈子。
「お父様は本当によろしいんですか?」
「はい?」
拓未が頭を上げた。
「こんなことは言いたくありませんが、本当にうちの愚息なんかでよろしいんですか?」
「・・・と、言いますと?」
「眞門さんの立派な肩書を考えると、やっぱり、どう考えても納得がいかないんです。どうして、うちの息子なんですか? 自分の息子を悪くは言いたくありませんが、眞門さんと違って、何も誇れるような肩書きが一切持ててない息子ですよ。眞門さんなら、もっとふさわしいお方がいくらでも見つけられるじゃありませんか。
お父様もそうお思いになられませんか? 本当にうちの息子と結婚して、後から不満たらたらなんてことありませんか?」
「はあ・・・まあ、お母様のおっしゃりたいことはよく分かります」
「私は、両親にに反対されました。主人と結婚することを」
「はあ・・・」
「私はそれでも主人を愛していたので、親の反対を押し切って結婚しました。それ以来、親とは疎遠になりました。ことあるごとに、うちの主人の文句を言うからです。あんな奴と結婚して、と。私は星斗に同じ目には遭わせたくないんです」
「はい、そのお気持ちは理解できます」
「Dom性だとかSub性だとか、その相性がとても大事だとか、そんなことを詳しく説明されても、私はNormal性ですので全く理解出来ません。ですが、子を思う親の気持ちは理解してもらえるはずです」
「はい。正しくその通りでございます。この際、お母様には正直にお話しさせていただきます。
最初は反対しました。正直、星斗さんはうちの息子には相応しくないと思ったからです。
ですが、息子の体調不良の期間、私と星斗さんは少しばかり同居する期間がございまして、その時に星斗さんの人間性と申しますか、星斗さんの優しさを拝見することが出来ました。
相手を思いやる優しい心を持った、とても素晴らしい方です。それで、私は結婚を認めることにしました。
うちの息子を幸せにして下さる方は星斗さんしかいないと思っております」
「その言葉、信じてもよろしいですか?」
「はい」
「それじゃあ、後、もうひとつ」
「なんでしょう」
「眞門さんに」
加奈子は眞門に視線を変える。
「星斗を今すぐ就職させてください」
「はい!?」
「! 母ちゃん・・・!?」
「それが私の最後の結婚を許す条件ですっ!」と、声高らかに宣言する加奈子。
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