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鬼Dom②

両家の顔合わせが行われたレストランがある階の共有の男子トイレの手洗い場で顔を勢いよく洗った青司。 鏡に映る頬が少し赤い。 火照りが全く消えていないことを悟ると、切ない顔を浮かべた。 「!」 鏡越しに拓未の顔が映り込んだ。 「拓未さ・・・」 拓未はすぐさま青司の口を右手で軽く塞いだ。 誰の姿もいないことを確認すると、大便器のある個室に青司を連れ込む。 拓未はニヤっと笑みを浮かべると、「随分、大人しいじゃないか」と、不敵な笑みを浮かべる。 「やっぱり、妻と子供にバレたら恥ずかしいか」 「当然です。拓未様がこんなバカなことをする人だなんて思ってませんでした・・・」 拓未の両手は青司の尻に向かう。 スラックスの上から、青司の尻の割れ目にある恥部を何やらギュッと押す。 「んあっ・・・」 青司から色っぽい声が洩れた。 「だって、今日はDom、だったんだろう」 「はい。朝起きた時の性別はDomでした」 「なのに、今はこんなスケベなSubになるなんてな」 拓未はまた、青司の尻の恥部をグイグイと押す。 「んぁーーっ、・・・ぁあんっ・・・ンっ・・・」 青司からなんとも艶っぽい声が洩れだす。 「青司が私を脅したんだぞ。Dom性だから欲望のコントロールを失ったら、酷い悪さをするかもしれないって。私たちのことを皆にバラすかもしれないって」 「だからって・・・」 「まさか、Domの尻にディルドを入れられると思ってなかったか?」 「拓未様・・・」 「ん?」 「これは・・・何ですか?」 「何って?」 「普通のディルドですか?」 その問いに拓未はやけにニヤニヤニとする。 「青司はやっぱり勘が良いな。私がそんなものを入れると思うか?」 「・・・すごく辛いんです。ディルドぐらいいつもなら平気なはずなのに。どうして、こんなにも、今すぐ、拓未様のモノが欲しいと思うんですか・・・? これ、拓未様のモノ、そのものを入れられてる感覚がしてて・・・とても恋しくなって辛いです・・・」 「辛いか?」 「はい」 青司の苦しそうでいて、どこか物欲している、そんな複雑な顔を見て、拓未はニヤニヤが止まらない。 「素敵なお顔・・・喜んでくれているんですか?」 「ああ、とっても。やはり、DomをSubに無理やり性転換させる快感はとても気分が良い」 「良かった。拓未様に喜んで頂けて。Switchに生まれてきて良かった」 「青司」 「はい」 「もう少し我慢できるか。食事が終わるまで大人しく」 「はい」 「なら、褒美を与えてやる。今度は本物だ。今、入ってるのは、私、そのものの偽物だ」 「! これ、拓未様、その物なんですか?」 「ああ。私の型を模って、特別素材で作ったディルドだ。そのものを味わえる特別仕様だ。特別な相手にしか使わん調教道具だ」 「! 嬉しいっ」 青司は思わず拓未に抱き着く。 「ありがとうございます。光栄です」 「お前は本当に可愛いSwitchだ」 拓未は青司の頭を優しく撫でてやる。 「知ってたか?」 「なんです?」 「私らの息子らも同じようなことをしてたことを」 「自分のことだけで精いっぱいで、全く気づきませんでした」 「まさか同じようなことを思いつくなんて・・・しかし、あいつらはこの大事な場をなんだと思っているのか・・・」 自分のことを棚に上げて愚痴を零す拓未。 「仕方ありませんよ。知未様は拓未様の血を受け継いだ立派な鬼Domですから」 「え? あいつが鬼Domか?」 「はい」 拓未は冷笑した。 「青司だけだ、そんな馬鹿げたことを言うのは。知未は鬼Domなんかにはなれやしないよ」 「いいえ。私は相手をしたことがあるから分かります。知未さんは羊の皮を着た狼ですよ。見た目を好青年に装っていますが、頭の中はSubを虐めることしか考えていない、隠れ鬼Domです。さすが、拓未様の英才教育を受けた方だと思います」 「褒め過ぎだ。あいつはDomにしてはダメダメ過ぎる」 「それはDomにしては優し過ぎるからです。だから、いつも悩ましい顔をしているんですよ、あの方は」 「そう・・・なのかもな・・・」 拓未は同意するように苦笑いを浮かべた。 「だから、私は知未さんのその優しさに付け入ろうとした。知未さんの弱みを使ってあなたまでも手中に収めようと考えた。けど、今は・・・」 青司は拓未の胸に顔を埋めた。 「加奈子さんが言ってた通り、星斗はくじ運だけは良いんです。だから、あいつが嫌いでした。くじ運が悪い私にしたら腹が立つ存在だから。けど、今は星斗のくじ運に感謝しています。あなたに巡り合わせてくれたのは星斗だから」 「青司も充分くじ運が良いと思うぞ。私は知未以上の鬼Domだ」 「はい。こんな年になって、あなたに躾けられる私は充分に幸せ者です」 青司はそう言うと、嬉しそうに微笑んだ。

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