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第5話

「ただいまー!」  陽が扉を開けるとすぐにリビングから騒ぐ声が聞こえ、廊下の扉が開く。出てきたのは、弟妹達だった。 「あちちゃん、おかーりー!」 「あきにいちゃん、おかえり!」  まず最初に駆け寄って来たのは、一番下の妹の愛菜(まな)。くりくりした目とふくふくしたほっぺに、二つ結びのツインテールが似合っている。  今年で四歳になる、甘えん坊真っ盛りの妹だ。  次にドタドタと元気な足音を立てて走って来たのは、三男の湊多(そうた)だ。  とにかくやんちゃで、毎日外で遊んでは泥だらけになって帰って来る。今年で小学三年生になるが、まだまだ子供だ。 「おかえり、にい」  そして、廊下に立ってその様子を見守っているのは次男の(かなめ)だ。  紀は中学二年生だが、年の割に大人びていて自制心がある。全く色恋沙汰は聞かないがきっと学校ではモテモテなのが容易に想像できる。  長男の自分がいない間は紀が弟妹達の面倒を見ていてくれるし、頼りがいのある弟だ。  足下に抱き着いてくる愛菜を抱き上げながら、三人に「ただいま」と笑いかける。  遊んで遊んでと騒ぐ湊多を引き連れてリビングに入ると、キッチンに立っていた母がこちらを見て笑いかけてきた。 「ただいま」 「おかえりなさい」  母は子供たちにお菓子を作っているらしく、甘い匂いが部屋に漂っていた。  今年で四十歳になるにもかかわらず、肌艶も良く、若々しい姿は近所の同年代の親と比べても一目瞭然だ。  いつも笑顔で前向きな言葉をかけてくれる母のおかげで、弟妹達も明るく育っているのだろう。  父は外資系の仕事をしていて海外に単身赴任中だが、時間が空けば家族の様子を確認する為にテレビ電話をしてくる。  母とも未だに仲が良く、日本に帰ってくると二人で温泉旅行に行ったりと仲睦まじい様子にこっちが照れてしまいそうになる程だ。  周りからしたらありふれた家庭かもしれないけれど、自分にとってはかけがえのないものであった。

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