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第13話

 待ち合わせ時間より十五分早く着いた陽は、年のため近くに美桜の姿がないか確認をしてから、景色に目を向けた。  公園にあるポール時計の下には花壇があって、色々な種類の花が植えられている。  それだけでその場所が華やかになるから花には不思議な力があると感じる。  花を見ていると、校内の掲示板に貼られていたカタクリの写真を思い出すと連想のように相良の顔が浮かんだ。  仲直りが出来て本当に良かった。  そして、相良のあんなに照れた顔を見れたのは何だかレアな気がして、嬉しかった。  次会う時は、笑った顔が見てみたいと思う。  あの写真を見てしまった後だと、どうしても不安になってしまうから、自分は相良の笑顔を見て安心したいのかもしれない。  どんなことで笑ってくれるのだろう。どんな風に笑うのだろう。想像を膨らませていると、早く相良に会いたくなる。 「陽!」  聞き慣れた声が少し遠くから聞こえ、思考を中断させて振り返る。  こちらに向かってくる人の中に、黒髪のボブヘアが見えた。彼女は、手を振りながら駆け寄って来る。  深緑のタートルネックに、オレンジのコクーンスカートを履いた美桜は、ショート丈のダッフルコートを羽織っていた。  その格好は彼女にとても似合っていて、とても可愛らしい。  美桜は走って来たらしく、少し息が切れていた。 「おはよう! まだ時間にも余裕あるんだし、走って来なくて大丈夫なのに」  笑いながら言うと、美桜は呼吸を落ち着かせた後、その顔に笑顔を咲かせた。 「陽に早く会いたくて」  素直に喜びを感じ、美桜が落ち着いたのを確認してからそっと手を差し伸べる。  照れくさそうに手を握り返してくれた美桜とショッピングモールに入っていくと、建物内は既に開店待ちをしている人々で溢れ返っていた。  ここはこの街で一番大きなショッピングモールだから、何かあればここに来ようと思うのだろう。自分もその一人だ。  欲しいものがあれば何でも揃うし、暇だからと足を運べばカフェもたくさんあるから時間もあっという間に潰せるのだ。  相良も、こういう所に来るのだろうか。  気が付けば自分はまた無意識に相良のことを考えていた。  あまり人混みに進んで入っていくイメージがないから、もしかしたらほとんど来たことがないかもしれない。  もう少し仲良くなれたら、一緒に来てみよう。  勝手に想像して楽しみにしている陽の中には、断られるということは想定されていない。  全く、自分はどこまでも陽気だ。

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