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第8話

「お前、初めて会ったとき、俺の何がそんなに気に入ったんだ?」 シャツを羽織りながら先輩が聞いてきた。 「えっ?あ、うーん…」 「なんだよ、うーんって。無いのかよ」 先輩は僕に時々こうして先輩を好きになったわけを聞いてくる。 自分を容姿的には大したことないと思っている先輩は、一目惚れだと言う僕の言葉をなかなか信じてくれない。一目惚れに理由など無いのだから、言葉で説明するのは難しい。納得出来る説明を僕がしないものだから、先輩は不安にかられるたびに、僕に理由を聞くのだ。 先輩と出会うまで、自分の性的志向など考えたことはなかった。恋をするという意味で、人を好きになったことがなかったから。 今でも他の男子を見て、ときめいたりしない。女子を見ればかわいいと思ったりもするが、それ以上の感情を持つことはない。 先輩だけだ。 見ているだけで胸が高鳴り、キスして、抱きしめて、抱きしめられたい、と思うのは。 あの日、初めて見た時から、爪のひとつ、髪の一本まで、先輩の何もかもが好きだ。

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