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第11話
僕と先輩は学年が二つも違う。日頃、校内で偶然に会うことはめったにない。家も同じ方角ではないので、登下校中に会うこともない。だから、たまに教室移動中に見かけると「なんかいいことあった?」と友達に気づかれるほど浮かれてしまう。
僕の世界は今や先輩を中心に回っているのに、先輩の姿を確実に見られるのは放課後の部活だけだ。先輩に会うためなら、キツい練習にも、迷惑をかけている部員たちへの後ろめたい気持ちにも耐えてみせる。
とはいえ、迷惑をかけていることへのせめてもの罪滅ぼしと、ちょっとでも近くで先輩を見たいという下心から、練習中の球拾いは誰よりも熱心にやった。練習後の掃除やボール磨きも、練習中は役に立たない僕の数少ない出来ることなので、心を込めてがんばった。
おかげで、人一倍手のかかる落ちこぼれ部員でありながら、上級生や同級生との関係は概ね良好だった。球拾い中に先輩に見惚れて球を後ろに逸らすことがあるのも、先輩たちの動きを熱心に観察している、と好意的に解釈してくれていた。
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