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第12話
バレー部に入って3週間くらいたったある日のこと、その日もほかの1年生より多く失敗して、その分多く体を動かした。練習後のボール磨きは、一緒にやっていた同級生が塾に行くというので、残りの数個はひとりで磨くことにした。
みんなが帰り、照明をほとんど落とした薄暗い体育館でひとりでボールを磨いていると、疲れと単調な作業のせいで、睡魔がおそってきた。ボールを膝に抱えたまま、うつらうつらと浅い眠りを漂っていると、ぼんやりと先輩が見えた。
3年生でレギュラーでキャプテンである先輩と、1年生で補欠にすら入らない僕は、部活中に関わることはほとんどない。1年生の僕のような初心者の指導は2年生がやるので、3年生とは接点がほとんどない。僕は気がつけば先輩をみているのだが、先輩はたまに目が合ってもすぐにプイと横を向いてしまう。
なので、今、先輩が僕の足元にしゃがんで、上目遣いで僕を見つめているのは、レム睡眠が見せている幸せな夢なのだろう。
夢ならば、何を言ってもかまわないはずだ。
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