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第15話

僕は自分に都合のいい空耳を聞いているのかと思い、聞き返した。 「先輩?今、なんて?」 「最初に言ったじゃん、お前、かっこいいって。俺、でかい奴好きなんだよ。だからでかい奴がいたらついつい見ちゃう。そしたら、練習とか、球拾いとか一番頑張ってるのにドンくさいとことか、地味だけどよく見たらそこそこイケメンなとことかかわいいと思って、なんか気がついたらいつもお前を探してる感じで、でも男にかわいいとか気持ち悪いから絶対言えないって…」 白い胸元を真っ赤に染めて、自分の肘あたりを指の関節が白くなるくらい力を込めて握りながら、狼狽えた様子で言葉をまくし立てている先輩を、僕は抱きしめていた。 かぁっと赤くなって先輩の体温が上がったのだろう、汗か何かわからない匂いが先輩からフワッと立ち登り、僕は眩暈がしそうになった。 夢なら、なんて都合のいい夢を見ていることか。もう、このまま目が覚めなければいいのに。

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