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第21話

「え?」 「お前の両親って、フルタイムの共働きなんだろ?俺んちは母親がパートで2時過ぎには帰って来るから…」 「…!あっ、せ、先輩⁉︎」 「バカッ、察しろよっ!」 もはや、古典などどうでもいい。 あの日のことを思い出すと、甘くて苦い、うれしくて悲しい複雑な感情が火山の噴火のように噴き出し、大声で叫びたくなる。 あの日、試験休みの日、11時頃先輩がうちに来た。 カーキ色のVネック、半袖のカットソーに濃灰のハーフパンツがよく似合い、日頃の制服やユニホーム姿とは雰囲気が違ってドキドキした。僕が赤くなったのを見て、先輩も赤くなってしまった。 2階の自室に通し、飲み物を持って帰って来ると、先輩が所在無さげに窓辺に立って外を見ていた。 「先輩」 僕が声をかけると、先輩がビクッとして振り返った。心なしか、唇が白い。 ラグの上に先輩を座らせコーラのグラスを渡すと、僕はまたそわそわと立ち上がった。 「暑くないですか?エアコンこれでいいかな?」

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